11人が本棚に入れています
本棚に追加
「母さん、俺ちょっとコンビニで飲み物買って来るわー」
俺は唐揚げを1つつまみ咥える。
「あ、そう?じゃあお母さんアイスが食べたいわ」
「えー、じゃあ私はお酒追加ー!!」
「買えねぇから」
「あーー!そうだったぁ‥‥!!」
姉貴が家に帰って来るのが嬉しいのだろう、チラッと見ると、親父においては完全に出来上がっている。
上着を羽織い、マフラーを巻く。玄関の扉を開くとその肌寒さに思わず息を吐いた。
まだ4月も初めだし当然と言えば当然。冷えた両手を擦り合わせながら俺は目の前の景色を眺める。流石は10階、とても綺麗だ。
田舎という事もあり、奥に連なる山々から先は真っ暗闇が永遠と広がっていた
ーーさて、寒いしさっさと行くか。
いくら3年ぶりと言えど、コンビニの場所くらいは覚えている。
「‥‥‥‥懐かしいな」
俺ぐらいの歳でも、こんな懐かしいと思える感情がちゃんとあったんだと何故か俺は一人で頷く。
夜だと人の気の無くなる道を、俺は大通りに向かって歩いて行く。道中にある公園や古臭い本屋もそのまんま残って居る。
「あったあった」
コンビニの前では楽しそうに若者が群れている。ああ言った生き物達には視線をやらない方が良いということを、これまでの人生で俺は学んだ。
店内に俺が入って来たのに気づいたようで、男性店員が顔を覗かせた
「らっしゃいませーー」
入り口でカゴを取り、頼まれてた物を放り込む。そうして居ると更に店内に人が入ってくる。
「らっしゃいませーー」
全くさっきと同じトーンで店員が声を出す。‥‥あいつ、やる気ねぇな。
最初のコメントを投稿しよう!