エピローグ

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エピローグ

━━2020年3月。 悠理が栃木から大阪に向かう日。 宇都宮の駅に、綾乃、未央奈、みなみ達の三人の他に、紗耶とさくらも来ていた。 「これを…悠理ちゃんに貰って欲しくて…。」 と未央奈は言って、一枚の絵を差出した。 「これは…。」 受け取った悠理は、 「もしかして…遥香が…?」 と訊いた。 「うん、悠理ちゃんに貰って欲しくて。」 と、未央奈は言った。 ━━公園のベンチで、悠理と遥香が楽しそうに話している絵だった。 「すごーい!」 絵を見た紗耶が言った。 「遥香さんて子、絵が上手だね!」 さくらも驚きを隠せなかった。 二人共、遥香とは面識がないが、悠理の親友という事は知っていた。 遥香の描いた絵は、とても上手くプロ級の出来だった。 「こんな大事な物、受け取れません。」 と、悠理は絵を返そうとした。 「悠理ちゃんに持ってて欲しいの…。 元々、悠理ちゃんにあげようとして描いてた絵だから…。 遥香、イラストレーターになりたかったみたい…。」 と、未央奈は言った。 流石、イラストレーターを目指していただけの事はあると、その場の誰もが納得した。 ベンチの傍にある柱も描かれていて、 《2001.8.8》と《YS & HI》という、 遥香の落書きも、しっかりと描かれていた。 「あれ?」 と、さくらは絵を後ろから見て、 「裏に何か書いてあるよ。」 と言った。 「あ、ほんとだ。」 紗耶も覗き込んで言った。 「ん?」 悠理は、絵の裏を見た。 そこには ※ サヨナラに強くなれ この出会いに意味がある 悲しみの先に続く 僕たちの未来 始まりはいつだって そう何かが終わること もう一度君を抱きしめて 守りたかった 愛に代わるもの ※ と書かれていた。 ━━これは遥香が好きだった曲の、歌詞の一部を抜粋したものだった。 何気ない言葉であるが、病気と闘っていた遥香の言葉となると、重みが違う…。 「遥香…。」 悠理の頬を涙が伝った。 「ありがとうございます。」 悠理は絵を受け取って、 「遥香…ありがとう…。 この絵…大切にするね…。」 と言った。 「遥香さんのお姉さん…。」 紗耶が声を掛けた。 「どうしたの?」 未央奈は、紗耶とさくらを見た。 「私達、遥香さんのお墓参り行ってもいいですか?」 と、さくらが訊いた。 「ええ、勿論。」 未央奈は少し間を置いて、 「でも、どうして?」 と訊いた。 「遥香さんは…。」 紗耶は悠理を見てから、 「私達の親友の心を救ってくれた、大切な人だから…。」 と言った。 「紗耶…さくら…。」 悠理の頬を再び涙が伝った。 紗耶とさくらの目にも涙が浮かぶ。 「遥香…。 果たせなくてごめんね…。」 悠理は少し間を置いて、 「8月8日の約束…。」 と言った。 遥香は短い人生の中で、多くの人を幸せにした…。 ━━悠理は、その絵に向かって声を掛けたのだ。 その絵は、部屋の右側の壁の端っこに飾られていた。 その絵の近くの台には、聖来と撮ったプリクラの手帳が置いてある。 悲しくなった時に、ここに来れば遥香や聖来に会える気がしたからだ…。 鈴本悠理、新たな門出の日である…。 【終】 ※~※ サヨナラの意味/乃木坂46様 作詞:秋元康様
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