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今から一年前の四月、なんとか志望校に入学できた俺は慣れない通学路に戸惑いながらも始業三十分前にはいつも教室にいた。
その日の授業の予習をするためだ。
入学式から一週間は十人以上いて賑やかだった教室も、四月の終わりになると普段の生活がだらしない者は十五分前までは来なくなる。
この頃三十分前に来る者は超が付くほどの真面目な者か、未だ緊張が抜けていない者か、朝練のある部活動に所属している者だ。
当時の俺は一番目だと考えていたが、今になって思えば二番目だったのかもしれない。
話を戻そう。
その日、俺がいつものように予習をしていると一人の少女が入ってきた。
俺は手を止めて彼女を見る。
普段の彼女は始業十分前に来る生徒で、俺が来てからまだ五分しか経っていないこの時間に彼女が来ることは珍しかったからだ。
何故この時間に?
気になった俺は彼女に質問した。
「今日は小テストだからね。私バカだから勉強しないとヤバいんだ」
そう返された。
ああ小テストか俺は大丈夫だな。
小テストならば前日に覚えてきたから絶対受かる。
俺がそう言うと彼女は目を丸くし
「君って頭良いんだね」
と言った。
そう大丈夫だ。大丈夫な筈だったんだ。範囲さえ間違えていなければ!
数日後、俺は再テストの為に居残りをしていた。
「君って案外バカなんだね」
彼女と一緒に。
俺が落ちた理由を彼女は知っている。俺が必死に弁解したからだ。
だが彼女は信じてはくれなかった。
俺は自分がバカではないことを証明するために一回で再テストを合格させると、二回目の再テストの為に勉強する彼女に勉強を教えた。
俺は部活に遅れたが、その甲斐あってか彼女は再テストに合格した。
それが彼女との最初の関りだった。
次の日から彼女は俺に話しかけてくるようになった。
俺が教えた勉強法が彼女に合ったからだ。
最初は困惑し面倒くさいと感じていたが、俺は次第に彼女と一緒に勉強するのが楽しく感じ始めていった。
それだけではない。
俺は彼女に惹かれていった。
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