トントン拍子

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見る目がないなとつくづく思った。選んでくれたのは嬉しい。けれど一等地というならほかにいくらでもあったはずだ。美女のプリプリの胸の上とか、かわいい子猫の頭の上とか。せめておなじ右腕なら、ムキムキのボディービルダーの腕を選べばいいのに。独身で平凡な平社員。そんな俺のどこが一等地なのかわからない。 「でもまあ、右腕をかざせばタダでいい酒がゴクゴク飲める。それは悪くない」と俺。  そのうち俺の右腕バーにはぽつり、ぽつりと客が入るようになり、繁盛しはじめて、さらに常連まで居着くようになった。常連のひとりにはとびきりの美女もいた。 カウンターから耳打ちしてくる。 「気になるんじゃないのか」とあいつ。 「釣り合わないよ」と俺。  あるとき美女が酔っ払いに絡まれた。俺もあいつも騒ぎを起こされるのは御免だ。しかし向こうは客。立場上、あいつは強く言えない。代わりに俺が追っ払った。無論酔った勢いで、だ。しかし人生なにが起こるかわからない。それがきっかけで、なんと付き合うことになった。 「お前の魅力が伝わり始めたのさ」とあいつ。 「いいや、お前のおかげさ。うまい酒の力だよ」と俺。
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