トントン拍子

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街でとある男の右腕に良いバーがある、と噂になったらしい。バーは日増しに繁盛を続け、いろんな人間がバーに、俺の右腕に集まるようになった。財界の著名人をはじめ、政治家から贔屓にしているユーチューバーまで多種多様。ついには、ウチの会社の上司まで見かけるようになった。ほかの常連に相談しているのがきこえる。 「プロジェクトの方針に困っていてね。どうしたものだか……」  きこえたものだから、俺は上司に意見してみた。ここは俺の右腕。だけど、バーといえばバーだ。会社と違って、出過ぎた真似をしても無礼講で済むだろう。すると翌日、上司が直接俺の元へ出向いてこう言った。 「昨夜、バーで意見してくれたのはキミだね? 例のプロジェクトを任せたいのだが」  なんとプロジェクトリーダーに抜擢されてしまった。 右腕のバーでその話をすると、あいつは我が事のように喜んでくれた。 「お前の力がわかってもらえたんだよ」とあいつ。 「お酒の力だよ」と俺。  すると上司にしたアドバイスが評判になったようで、今度はバーだけでなく、俺の事まで噂になってしまった。 『すばらしい酒を出すバーに、すばらしいアドバイスをくれる男がいる』
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