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6日目
「負けた。盛大に負けた」
転がっていた籠手を、グーでポコポコと殴っている右近寺優にそう言うと、彼の手がピタリと止まった。
「うん。負けたな。坊主じゃなかったから、行けるかなと思ったんだけど」
先日、新人戦が行われた。俺と右近寺は団体戦に出たのだが、対戦相手が坊主頭の強豪校という予想に反して、髪の毛がそれなりに伸びていて、なんとなく強くなさそうだったので、もしかして勝てるんじゃないかと期待していたが、大将で出た部長の石野以外は勝ち星をあげることができず、負けてしまった。
「勝てそうだったのになあ。悔しい」
詳しい戦績としては、先鋒の俺が二本負け。次鋒の後輩が一本負け。中堅の右近寺が引き分け。副将の山下が二本負け。そして、大将の石野が二本勝ちだった。
俺は悔しがる要素もないぐらい盛大に負けたが、引き分けだった右近寺は心底悔しいようだ。
「また次の大会頑張ろう」
自分自身と右近寺を慰めるように言った。
「そうだな。まあ、次の試合は結構先だからな。その前に、修学旅行も文化祭も体育祭もテストもあるし、目白押しだよ」
学生には大量のイベントが待ち構えている。すぐに切り替えていかなければならないのだ。
「だな。はあ、頑張ろうっと」
「おう」
その日はあまり会話が弾まなかった。試合に負けたダメージがまだ癒えていなかったからだ。
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