多分これは不可避

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 ユウキの友達にこんな子いたっけ?  彼の隣にいたのは鬱陶(うっとう)しいくらいの長い前髪が黒縁メガネを半分隠しちゃってる、根暗そうな……。 「クロ、くん?」  本名は忘れたけど、ユウキがそう呼んでたあの子!  こんな垢抜けた可愛い子じゃなかったけれど、ユウキの友達といえばその子しか覚えていない。  唯一覚えていたその彼の名前を呼ぶと嬉しそうに大きな口を横に広げて笑って何度も頷いて。 「そうです、クロです! 久しぶりです、覚えててくれて嬉しいです!!」  差し出された手を握ると、ギュッと包み込むようにしてブンブン振るう。  あれ? こんな人(なつ)っこい子だったっけ? 「彩未センパイの会社って、この辺りですか?」 「そう、このビル」  今日は同僚たちより少し遅れて一人ランチタイム、帰る途中だった私は目の前のビルを指差した。 「マジかあ~!」  ニッと笑うクロくんは、ここから三つ先に見える駅よりのビルを指差した。 「オレ、あのビルにいるんです」 「あそこって、確か美術系の専門学校が入ってるとこ?」 「です、今そこで助手をやってて」  へえ、アーティストの卵?  どうりでサラリーマンぽくはない。  ジーンズにシャツワンピ、そして黒い大きな帽子。  顔も可愛いからモデルでもやってるのかと思った。  話していると周りの女の子たちが振り返ってく。 「ここで会ったのもなにかの縁だと思いません?」  広い都会でこんな近くに同郷の人間がいるなんて! と彼は目を輝かせて。 「良ければ連絡先、交換しません?」 「ん~? しません、またね」  速攻却下!  いきなり連絡先聞いてくるとか、ちよっと嫌だな、軽すぎる、無理、ごめんなさい。  私はそういうノリに付き合えないもん。  とっとと背を向けて歩き出した私に。 「彩未センパイー! また会いにきます!! またねー!!」  止めて! お願い、そんな大きな声とかマジで止めて。  恥ずかしいけれど、会社に入る前にチラッと振り返るとまだバイバイと両手で大きく手を振ってるのが目に入って。  恥ずかしさで知らんぷりのまま顔を(そむ)けてクスリと笑いが込み上げた。  なんだか憎めない子。  高校時代の暗そうな感じとは変わった、そんな印象を受けた。
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