287人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
帰り道、駅に向かう途中、あのビルから若い女のコに囲まれたクロくんが出てきたのは、数日後の夕暮れのこと。
ノー残業デーは大体ここの学生たちと帰宅が被るのを忘れてた。
この間のノリで絡まれるのを避けたくて、気付かれないように通り過ぎようとしたのに。
「彩未センパイ!!」
しまった、見つかった!!
またね、と周りの子を振り切ってこちらに走ってくる彼。
何? 何なの?
「お仕事お疲れッス」
やっぱりノリがチャラい、私の周りにはいないタイプの人間だ。
「ありがとう、クロくんも終わり? お疲れ様」
社会人三年目、コミュニケーション能力は昔よりは良くなってるはず。
彼が苦手なタイプであることを、顔には出してはいない、つもり。
勝手に並んで歩き出してくるのに困りつつ、駅までは少しの距離だしと我慢。
とっとと巻こう、さっさと帰ろう。
「彩未センパイ、高校の時から全然変わってないですね!」
「クロくんは変わったよね」
嫌味のつもりで言ったのに彼は嬉しそうに笑ってる。
「あ! そうだ! センパイ、これ、良ければ貰って下さい」
また、連絡先!?
身構えて横目でそれを確認すると。
一枚のチラシ?
立ち止まりそれを貰って確認した。
最初のコメントを投稿しよう!