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『クロキ アツシ 初の個展』
チラシにはそう書かれていた。
夜空かな?
星座を散りばめたようなキレイな色が夜空にたくさん咲いている絵。
一瞬その美しさに見惚れてから、やっと気づく。
「もしかして、クロくんの個展?」
今更だけどクロキアツシ、が彼のフルネーム?
「そうなんです、今週末なんでよければ」
今週末、何かあったような気もしないでもないけれど。
「約束はできないけど、吉祥寺に行きたい店があるから時間があれば寄ろうかな」
「マジ!? めっちゃ嬉しい! 待ってます、待ってるんで!」
「いや、だから、約束はできないって! ねえ、聞いてる?」
嬉しそうに笑うクロくんに苦笑い。
基本こういうのは社交辞令でやんわりと断るタイプ。
だけど、本当に純粋にキレイな絵だな、観てみたいなと興味が沸いたのだ。
色んな路線に続く広場まで出たところでクロくんが足を止めた。
「あ、センパイって、何線ですか?」
「……総和線」
「あ、一緒だ!!」
げっ!!
「駅まで同じだったりsて」
ニッと嬉しそうに笑ったクロくんにピシャリと。
「なら怖すぎ」
思ったことがポロリと口から溢れてしまって、その瞬間クロくんはショックを受けたように目を見開いていた。
「んなつもりじゃなかったんすけど、何かスンマセン」
ショボンと肩を落としてしまう姿が、怒られた犬みたいに見えてしまった。
こっちが悪いこと言ってしまったかのようで、ズキンと胸が痛む。
いや、確かに失礼な言い方だよね、私ってば。
「ごめん。言い方、キツかったよね。」
人を傷つけてから気づくのは悪い癖だ。
ユウキとの最後もそれだった。
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