Me と them

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 河原に亜理紗を呼び出したふたり。その目の前で対峙する和也と進。 「やめてよ、ふたりとも」 「いや、亜理紗はそこで見ててくれ」 「ああ、ちょっと待っててくれ。こいつから話があるから」 「お前、まだそんなことを」  ふたりの視線は今にも火花が散る勢い。互いに上着をはぎ取るようにして捨てた。  それを合図に、ふたりがぶつかった。互いの拳が互いの顔面に炸裂した。 「うがっ!」 「うぐっ!」  相打ち。どちらも引かない。先に顔を上げたのは進。それに対し、臨戦態勢を取る和也。  進は和也に亜理紗を止めてもらうため、右手に気持ちを乗せて打ち込んだ。 「ぅぐぅっっ」  何とか耐えた和也。今度は和也の番。進の気持ちはよく分かってる。亜理紗も待ってるはず。その思いを進にぶちかました。 「うっつぅ」  和也も進も、相手のことを思いやって、思い切り打ち、懸命に耐えた。何度もなんども繰り返される打ち合い。  ずっと仲良くやってきた。男だとか女だとか、どうでも良かった。なのに、知らずしらずの内に、思いもしない想いを持ってしまい、今、互いが互いをリスペクトし合い、自分の想いを押し殺し、そして、ひとりの女を託せるのは、殴り合ってる目の前の男だと信じて疑わない。  負けられない戦いがここにあった。  いつまでも、いつまでも続く殴り合い。ふたりを見つめる亜理紗の瞳からは涙がこぼれ落ちていた。  そしてまた、強烈なパンチがふたりの頬を打ち抜いた。もうギリギリ。何とか立っている状態。あと、一発でも食らったら最後だ。和也も進もそう感じていた。  ふたりは最後の力を振り絞って、間合いを詰めていく。  そして、渾身の一発……。  届かなかった。ふたりはもつれ合うようにして倒れた。 「和也、進……」  駆け寄る亜理紗。ボロボロのふたりの手を取った。 「わたし、こんなじゃ行けないよ」 「い、いや、行ってきてくれ」 「そ、そうだ、行ってくれ」 「俺たち、分かったことがあるんだ」 「ああ、俺たち亜理紗のことが好きだってことを」 「ええっ!?」 「ふふっ、驚いたか?」 「それに俺たちも、簡単に切れない友情があったってことも」 「もう、ふたりとも……」 「だから、俺たち亜理紗の幸せをこっちで願ってる」 「そう、それに、もし何かヤバイことがあったら助けに行ってやるから」 「うん、ありがと。でも、こんなんじゃ助けてもらえないよ……?」 「心配すんな。俺たちの友情を信じろって、な?」 「うん、信じてる。でも、ふたりが仲良くなりすぎちゃって、ふたりでくっつくてのはなしにしてよね」 「バカやろ。そんなこと……」 「あり……えない……」 「ヘンな雰囲気出すなよ!」 「冗談だって!な?」 「そうだといいけどっ!」
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