魔王だって生きている

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 この世に魔王が復活したという噂が流れて数年は、どうということも無くて平民である俺はなんの変化もない生活を送っていた。  復活の噂は俺が16の歳に広まって、今は20になったのだからまだ10年も経ってないとは思うけど、そろそろ魔王の力も全盛期と変わらぬまでに戻っているだろうし、王都の方では勇者のご降臨を望む声が高まっているとかいないとか。  俺の住む田舎に魔王軍が攻めてきたのはそんな時で、まだ魔王への対応が王都でしか行われていない時だった。  下級の魔族に全てを壊されて、年若の男も女も攫われた。  俺は攫うには少しとうが立っていただろうけど、望むだけの数がいなかったのかもしれない。ついでのように攫われてしまった。  その後、どういう経緯でそうなったのかは知らないが俺は攫われた子たちと魔王の城へと連れていかれた。  俺以外全員五歳以下だったのはそれこそ魔王復活のせいで、俺だって万全であれば今頃は王都への道すがらどこかの村の宿屋で一息入れていたかもしれないのに。  魔王軍が襲撃してきた時には、六歳以上三十五歳までの男女全て王都へ集まれと伝令がきて、数日のうちに全て王都へと旅立ったあとだった。  俺はたまたま起き上がれないほどの熱が出て、下がり次第王都へ向かうよう、騎士様にいい使っていた。母が。  熱が下がって、もうここまで来たら別に王都には行かなくてもいいかな、なんて思いながら荷造りをしていた時に襲われたのだ。  田舎の村は対抗するための装備もなく、ただ逃げ惑う大人と泣きわめくだけの子どもで溢れていた。  そんな中、魔族は的確に子どもだけを攫い大人を排除していった。  小さな村で細々と暮らしていたから体が小さかったのも原因かもしれない。  怖くて怖くて、家の台所の隅に蹲っていたのを目敏く見つけた魔族に易々と捕まってしまったのだ。  魔王の城は鬱蒼とした森の奥にポツンと建っていた。城の半径50イーグ(1イーグ1.3m程)は枯れ木が多くなっていて、これぞ魔王城といった佇まいだった。  勿論馬車で移動なんてまどろっこしい事はしなかった。大きな風呂敷のような布に小さい子たちと一纏めにされて、多分空を飛んで運ばれたのだ。  空から見た世界なんか、一生見ることなんてないのだから見てみたかったと思う。だってどうせ殺される運命なんだろうから。  狭い場所で泣く子どもたちにかける言葉なんて思いつかなかったけど、とりあえず「大丈夫」と宥めているうちに、静かに地面に降ろされる。  着いてまず、大きな広間に連れていかれて貴族が使ってそうな大きな食卓に座らされて、豪華な食事を与えられた。  それは何日も続いて、ああ太らせてから食べられるのか、とここにいる全員・・・と言っても七人しかいないけど、全員が思った。ならば、と最後の晩餐とばかりにあるものを全て喰らい尽くす勢いで三食ガッツリ食べさせてもらった。  ガリガリだった俺も、そして子どもたちもある程度ふっくらと標準体型になった時に、何人か・・・魔族を『人』と数えていいのかはわからないけど、何人かの魔族がやってきて自分の奴隷として使えそうな子どもを連れていった。  年齢的に無理だと思われたのか、俺だけが残されて他の子たちは全員いなくなった。何故か魔族も。  ・・・いや。こんな所に一人で残されても困るんだけど。  なんて呆然としていたら、かなりオーラのある魔族がやってきて「何をしている」と凄まれる。 「人間か?ーーああ、ディブィが言ってたヤツか」  と近寄ってきた。俺は恐怖と驚きで固まってしまった。その魔族が俺の顔に手をかけようとした時だった。 「くっさっ!!!!」
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