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「ん?」「落ち着いてきたな」 「トントコ ココニ」 床は畳に戻りましたが、謎の声です。 これは、皆 聞こえております。 「どこからした?」 「あの額縁?」 壁には いつの間にやら、額が掛かっておりました。紐で吊って御座いますので、額を壁から離してみますと、ぽとりと鞘が落ちます。 「爺ちゃんの」 三度 出ようとは... 実際には、平太郎の家来が 以前失くした鞘のようですが。 外からは、どす っと、何か重たい物が落ちる音が 致しました。 「大きい物が落ちた音だったよね... ?」 「何だろう?」 私が確認しに行きますと、納屋の前に 漬物の瓶が落ちております。茄子の糠漬けです。 土間の水瓶の蓋が開きましたので、鍋に掬い 茄子を洗うと、包丁で切り、皿に盛って戻りました。 「茄子?」 「ああ、キュッキュ言うよな」 「あんまり好きじゃないけど... 」 しかし 再び出現した湯呑に、緑茶が湧きましたので、皆で摘みました。 「あれ? 机が出てきてる」 「上にあるやつ、何?」 「お仏壇の線香立てるやつじゃない?」 「香炉だよ」 香炉は 机から浮き出し、座敷を浮遊致しました。 はらはらと落ちる灰から、緑茶や茄子を 庇わねばなりません。十六日目の怪異で御座います。
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