382人が本棚に入れています
本棚に追加
「もうし... 」
外からの声です。女人の声。
本では、何処ぞの奥方であり、絶世の美女と記憶にありますが、土間の方から聞こえし声は
榊の声に似ております。
「夜中に女の人?」
「ないよな」
「オバケだって、絶対」
しかし、女人の声でありますので
確認へ向かう私に、皆 ついて参りました。
「あなた様方が、どうしておられるか心配で... 」
残念ながら、入口に姿は無く
声のみが聞こえるのです。
「無事に過ごしております。御心配されぬよう」と 答えておりますと、たらいが転がり出しました。
「あれ、盥よ。これは敵わぬ... 」
たらいは、遠ざかる 榊らしき女人の声を追い
転がり出て行きました。
それが、からりと止まる音。
「たらい、回収した方が いいかな?」
「なんで たらいが怖いんだろう?」
外は暗く、行燈ライトも 一つのみですので
皆で回収に出ました。
たらいは、そう離れておらぬ場所に御座いましたので、無事 持ち帰り、再び座敷に戻ろうと致しますと、「あああ... 」と 真田が震えます。
最初のコメントを投稿しよう!