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「もうし... 」 外からの声です。女人の声。 本では、何処ぞの奥方であり、絶世の美女と記憶にありますが、土間の方から聞こえし声は 榊の声に似ております。 「夜中に女の人?」 「ないよな」 「オバケだって、絶対」 しかし、女人の声でありますので 確認へ向かう私に、皆 ついて参りました。 「あなた様方が、どうしておられるか心配で... 」 残念ながら、入口に姿は無く 声のみが聞こえるのです。 「無事に過ごしております。御心配されぬよう」と 答えておりますと、たらいが転がり出しました。 「あれ、(たらい)よ。これは敵わぬ... 」 たらいは、遠ざかる 榊らしき女人の声を追い 転がり出て行きました。 それが、からりと止まる音。 「たらい、回収した方が いいかな?」 「なんで たらいが怖いんだろう?」 外は暗く、行燈ライトも 一つのみですので 皆で回収に出ました。 たらいは、そう離れておらぬ場所に御座いましたので、無事 持ち帰り、再び座敷に戻ろうと致しますと、「あああ... 」と 真田が震えます。
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