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離別
ある日、いつも通りに家に帰ると、アイのお出迎えがありませんでした。
不思議に思いましたが、まだ寝ているのかな、と思い、アイの名前を呼びながらリビングに行きました。
扉を開ければ、そこには起きたアイが可愛い声で「ミャア」と言ってくれる――期待を胸に抱きながら、私は半開きの扉を開けました。
だけどそこで待っていたのは、いつもの元気なアイではありませんでした。
アイは病気を患っている――病院でそう聞かされました。
それはネコにとっては致命的な病気だそうです。治療をしなければアイは助かりません。
私は迷うことなく、アイを治療して欲しいと頼みました。幸いにも、ずっと仕事だけしかしてこなかったので、お金には問題ありませんでした。
多額のお金を払い、アイは治療のために戦い始めました。
治療のために懸命に病気を戦うアイ――私に心配してほしくないのか、弱弱しい姿でもいつも通りに「ミャア」と鳴いてくれます。
がんばれ……がんばれ、アイ。絶対に治るから、頑張って治そうね!
治ったらいっぱいご馳走を食べさせてあげるからね。だから絶対に治そうね!
私は必死に応援しました。今までアイからもらった分、今度は私がアイを元気づける番だと。
私の応援を聞き、アイは一層病気を戦いました。懸命に、病気を治すために。
だけど……その努力が叶うことはなく、アイの体は冷たくなっていました。アイの小さな体では治療に耐えることができなかったのです。
アイの亡骸を前に、私は泣きました。大粒の涙を流し、大声を上げて泣きました。
何もできなかった……してあげられなかった、幸せにしてあげられなかった。
私はもらってばかりで、アイに何もしてあげられなかった……何も、何も!
もしあの日、私がアイを引き取ると言わなければ、アイはもっと生きられたはず。もっと幸せになれたはず。
あの日私が言った、考えなしの言葉のせいで、アイの人生を潰したんだ!
私が! アイを殺したんだッ!!!
ごめんね……ごめんね……アイ……。
私は自分を責めて責めて責めて……責め続けました。
だけどアイが戻ってくることはありません。鳴いてくれることはありません。
アイは、私の家族は……もう二度と、戻ってこないのです。
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