25-15

1/1
前へ
/233ページ
次へ

25-15

「じゃ、やっぱりユウセイさんにどう話すかかな」 「うん。あの時はあれで良かったと思ってるけど、それとは別に、知らない間に子どもがいるってのは悪いなって思う」 「そうだねぇ。ビックリするだろうなぁ」  驚かないわけがない。今まで一切彼に迷惑は掛けていないとはいえ、当たり前の状況ではない。  驚いて、その後に来る感情は、喜びなのか怒りなのか憎しみなのか。予想は出来ない。 「そういえばユウセイさん、子ども欲しかったって」  彼が語った離婚劇の顛末を思い出す。 「そうなの?」  聖名が問い返す。 「うん。裕奈ちゃん、ユウセイさんが前に結婚した時のこと聞いた?」 「結婚してたことは聞いたけど、詳しいことは知らない」 「あれね、子どもが出来たって言われて籍入れたんだって」 「でも、子どもはいないって」 「いないよ。その相手が、ユウセイさんと結婚したくてついた嘘」 「何それ。ヤバいじゃん」  聖名が顔を歪める。 「すぐバレるじゃん、そんなの」 「そう。だから喜んで籍入れたら、流産したって更に嘘つかれて」 「はあ!? バカでしょ、そいつ」  聖名は怒りを露わにする。二人の子どもを産み、大切に育てて来た彼女には、決して許せない嘘だろう。 「だから、結局それがバレて離婚」 「そうだったんだ…」  裕奈は唖然として、呟く。 「ひどいなぁ…あの人、あれでピュアだから騙されるよ、それ」 「ね? でも、それで飛びつくくらい子どもは欲しかったんだよ」 「でも、彩人はもう大人だけど。可愛いさかりとか、とっくの昔だし」 「そうだね。もうキャッチボールはしないかもしれないけど」  しおんはにっこり笑い、彩人を見ながら、ユウセイが楽しそうに言ったことを繰り返す。 「ツインヴォーカルなら出来るよね」 「…いいのかな?」  裕奈の表情に、僅かに不安がチラつく。期待を抱いても良いのかと。
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加