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25-15
「じゃ、やっぱりユウセイさんにどう話すかかな」
「うん。あの時はあれで良かったと思ってるけど、それとは別に、知らない間に子どもがいるってのは悪いなって思う」
「そうだねぇ。ビックリするだろうなぁ」
驚かないわけがない。今まで一切彼に迷惑は掛けていないとはいえ、当たり前の状況ではない。
驚いて、その後に来る感情は、喜びなのか怒りなのか憎しみなのか。予想は出来ない。
「そういえばユウセイさん、子ども欲しかったって」
彼が語った離婚劇の顛末を思い出す。
「そうなの?」
聖名が問い返す。
「うん。裕奈ちゃん、ユウセイさんが前に結婚した時のこと聞いた?」
「結婚してたことは聞いたけど、詳しいことは知らない」
「あれね、子どもが出来たって言われて籍入れたんだって」
「でも、子どもはいないって」
「いないよ。その相手が、ユウセイさんと結婚したくてついた嘘」
「何それ。ヤバいじゃん」
聖名が顔を歪める。
「すぐバレるじゃん、そんなの」
「そう。だから喜んで籍入れたら、流産したって更に嘘つかれて」
「はあ!? バカでしょ、そいつ」
聖名は怒りを露わにする。二人の子どもを産み、大切に育てて来た彼女には、決して許せない嘘だろう。
「だから、結局それがバレて離婚」
「そうだったんだ…」
裕奈は唖然として、呟く。
「ひどいなぁ…あの人、あれでピュアだから騙されるよ、それ」
「ね? でも、それで飛びつくくらい子どもは欲しかったんだよ」
「でも、彩人はもう大人だけど。可愛いさかりとか、とっくの昔だし」
「そうだね。もうキャッチボールはしないかもしれないけど」
しおんはにっこり笑い、彩人を見ながら、ユウセイが楽しそうに言ったことを繰り返す。
「ツインヴォーカルなら出来るよね」
「…いいのかな?」
裕奈の表情に、僅かに不安がチラつく。期待を抱いても良いのかと。
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