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26-1
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ノートパソコンを開いて、ツイキャスにアクセスする。問題なく画面は開き、ベルノワールのアカウントを表示する。
開始予定は18:30。
あと5分だ。
「えれー早くから始めんだな」
しおんの背後から、和馬が画面を覗き込んでそう言う。今日は日曜日なので、一緒に見られる。
「うん。これ、今日のオープンの時間だね」
「19時スタート?」
「その予定だったよ」
「ベルノのライブ、見てみてーな」
「あ、そうだよね。和馬さん見てないもんねぇ」
すっかりベルノワールの略称に慣れたようで、和馬はすらっとベルノと口にする。
YouTubeの公式チャンネルには、メンバーチェンジ以前のライブ映像がいくつかアップされているが、裕奈から見る必要はない、と言われているので殆ど見ていない。
「今のメンバーのライブ、かなりいいよぉ。CDのHateより成長してる」
「あれ録ってから半年かそこらだろ? 頑張ってんな」
「うん。かなり燃えてるみたい」
「名古屋いつやるんだ?」
「えーっとね」
ブラウザを閉じようか少し迷って、スマホを取り出し、ベルノワールの公式サイトにアクセスしてスケジュールをチェックする。
「6月27日。土曜日かぁ。和馬さん行ける?」
「んー…でも、9時くらいにゃ終わるだろ」
「そうだね。ハコはウィークエンド」
「そんなら行くか。たまには若手も見ときてーし」
「じゃあ、チケット取っとくね」
突然、パソコンからヘヴィなサウンドが響き出す。これはベルノワールの曲ではないようだ。
「お、デッドエンドじゃねーか」
「あ、そうだ。これ、デッドエンドだね」
しおんより少し上の世代がこぞってリスペクトするアーティストに上げていた、後進のヴィジュアル系バンドに多大なる影響を与えたバンドだ。ヘヴィメタル色が強く、そのヴィジュアルはリスペクトするバンドマン達のお手本となった。
画面は暗いまま、何のアナウンスもなく曲が流れて行く。
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