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26-2
「そう言えば、こないだの客入れもデッドエンドだったなぁ」
「メンバーに好きなヤツがいんだな」
開場からライブの開始までの間は、何がしかのBGMが流れていることが通例だ。それはメンバーが好きなアーティストだったり、そのアーティストのアルバムだったりと、選曲に決まりはない。
「若ぇのに、いいの選ぶじゃねーか」
「ね。あ、ガスタンクになった」
これも同世代のバンドだ。パンクの血を引くこのバンドも、ヴィジュアル系の初期に強い影響を残している。どちらも、しおんは一通り聴いている。
「わかるファンいんのか?」
「いないかも、流石に」
開始から暫く待っても、画面はそのままだ。コメント欄がざわつき始める。
「どうしたんだろ。トラブってるわけじゃなさそうだし」
「おかしいな。まあ、もうちょい待つか」
「うん。そのうち何かアナウンスあるかもね」
それからも、まだその2バンドの曲が代わる代わる流れ続ける。
しおんがコーヒーを入れて戻って来ると、不意に音量が下がる。そして、女性の声でアナウンスが流れる。
「本日はベルノワール、Isolation act.2へ御来場頂き、誠にありがとうございます」
「えっ、5分押し!?」
ライブスタートの5分前に流れる、お決まりのアナウンスだ。女性の声はいつも通りの注意事項を淡々と読み上げる。
「間もなく開演致します。今暫くお待ち下さいませ」
「完璧な5分押しだな」
「まさか、ライブやる気じゃないよね…」
無観客で、ライブを配信する。他のアーティストがやっていないことはないが、簡単に出来ることではない。しかも、ツイキャスで流すとなれば、完全に無料だ。
「すげーな。マジかよ」
和馬にはそれがどんなことなのか、はっきりと理解出来る。唖然として、画面を眺め続ける。
19:00ジャスト。BGMがぱたりと途切れる。静まり返った画面から、彩人ではない、綺悧の低く押し殺した声が聞こえた。
「ようこそ。僕の実験室へ」
「ヤバ…」
完全に、前回のライブのオープニングと同じだ。彼らは、本気でライブをやるつもりだ。
低く唸りを上げるベース。そこに重なる、金切り声のようなギター。
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