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26-3
「愛せないなら、殺しましょう」
綺悧の声をきっかけに、一気に雪崩込む雷鳴のようなツーバス。画面が突然真っ白にフラッシュする。
ツイキャスの音声では限界があるけれど、それでも激しい音圧に押し倒されそうだ。
しおんは音量を上げる。
照明が落ち着くと、画面には5人が映っている。恐らく、どこかのレコーディングスタジオだ。
ライブの立ち位置と同様に、それぞれの位置に立ち、カメラに向かってメンバー達が煽る。
「最前ドセンってわけか」
和馬の言う通り、真正面から、何の障害物もなくライブを見ている感覚だ。足りないはずの、ファンたちの歓声や熱気まで感じる。
このツイキャスを見ているファンたちの熱気が、回線を通じて伝わってきているのかも知れない。
激しく、しかし切ないその曲が終わる。
少しの間ののちに、綺悧がMCを始める。
「こんばんは、ベルノワールです!」
先程までの切なさに満ちた表情とは一転し、彼はにっこり笑う。そして、少し真顔に戻る。
「今日予定していたIsolationが中止となってしまい、楽しみにしていて下さった皆様には本当に申し訳ありません。皆様の健康が第一と考え、このような決断に至りました」
綺悧の表情は苦しそうだ。中止の決定に涙を流したという彼だ。どんなにか悔しかっただろう。
左端で俯いている宵闇の表情はわからないが、他のメンバー達も綺悧と同様に唇を噛み締めている。
それだけでも、彼らがどれ程このライブに力を入れていたかがわかる。
「その代わり、にはならないかもしれませんが、今日はこうしてスタジオライブをお届けさせて頂きます。録画も残すので、次に会える時まで楽しんで下さい」
「やるじゃねーか」
和馬はニヤリと笑う。
「いい根性だよ」
「うん。カッコいいね」
ライブに対する彼らの執念が、このオープニングに感じられる。
一つ息を吸い込んだ綺悧は、曇った表情を振り払い、笑顔になる。
「と、いうことで。1曲目はアルバムに収録する新曲第2弾、籠の鳥でした! どうですか?」
そうカメラに向かって尋ねると、両耳に掌をつけ、レスポンスを聞いているようなアクションをする。
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