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26-4
「うんうん…って聞こえないんだけどね!」
明るく笑って、舌を出す。
「今日はこうやって、ライブの体勢になっちゃってるから、リアタイでコメント読めないんだ! ごめん! 後でちゃんと、皆で読むからコメント入れてね!」
「一応、そこに画面出してんだけど」
上手ギターの朱雨が、カメラの横辺りを指さす。
「遠くて読めねぇんだわ」
「朱雨くん、近く行って読んでていいよ」
「おい待て、完全に見切れるだろーが!」
下手ギターの礼華がくすくすと笑う。ライブの雰囲気そのままだ。
「映りたい?」
「映らなかったら、俺何しにこのカッコなんだよ」
全員、メイクと衣装をフル装備したライブ仕様だ。確かにここまでして映らなかったら、何をしに来たかわからない。
「朱雨はそこでコメント読み上げてろよ。イヤモニに流してくれたらいいわ」
夕がニヤつきながらからかうと、朱雨は後ろを振り向いて返す。
「だから、何の為のメイクだっつーの!」
「趣味じゃねぇの?」
「趣味と実益兼ねてんだよ!」
綺悧はケタケタと笑って、カメラに向き直る。
「今日はフルライブ出来なくてショートバージョンになるけど、楽しんで行って下さいね!」
そして、メンバーを振り返る。
「じゃ、いい? 大丈夫?」
各自が頷くのを確認して、綺悧がカメラに囁きかける。
「Capsule」
バスドラムが4分音符を重く刻む。そのビートにスネアドラムとフロアドラムが乗り、ベースが入る。
重い空気感で始まり、地を這うようなヴォーカル。
ギターが合流し、どんどんとカプセルの中に追い詰められて行くような、息が詰まるような展開が続く。
精神的に限界が来てしまいそうな、狂ってしまいそうな、そのギリギリで、固く閉ざしていたカプセルが弾け飛ぶ。
突然の転調で解放感を味わうけれど、ヴォーカルが歌うのは無限の絶望だ。
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