26-7

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「身長だけじゃなくてね、靴下が嫌いなところが似てるよね」 「は? 靴下?」 「和馬さん、家で靴下履かないでしょ? 履いててもその辺に脱いで置いてきちゃうし」 「それは悪ぃ」  時々それを拾って、洗濯機に放り込むのがしおんの役目だ。 「貴昭さんもなの知ってた? この間遊びに行った時にテーブルの下で、足の指で脱いでてね。亜由ちゃんに怒られてるの見て笑っちゃった」 「余計なとこ似やがったなぁ」  和馬は苦笑する。顔立ちは似ていないのに、和馬の表情はどことなく貴昭を思い出させる。 「和馬さんのご両親はどんな人だったのかなぁ」  しおんが出会うまでに、和馬の両親はどちらも故人となっていたので、対面することは叶わなかった。もし存命していたならば、どんなふうにしおんを見たのだろう。受け入れてくれたのか、それとも拒否されていたか。  和馬も、それは想像が出来ないと言う。 「ま、普通の親だったよ。戦時中生まれのさ」 「どこが似てたんだろうねぇ」 「自分じゃわかんねーな」  そう言って笑うその笑顔は、どちらに似ているのだろう。 「ま、お前はお義母さんと瓜二つだからな」 「だよね。どこが父親に似てるのかは、俺も知らないなぁ」  母とは顔も似ているし、好きな物に熱中する質も似ている。父親と似ているところがあるかどうかは、母にしかわからない。 「どっか似てんのかもな」 「そうだねぇ」  夕と軽妙なやり取りをしている綺悧は、反応の見えないオーディエンス相手に奮闘している。いや、奮闘しているのであろうが、決してそれを見せない。 「それどこの夕さん?」 「俺だわ」  レコーディングがない時はどうしているか、との問いに夕が練習と答えると綺悧がそう返す。 「面白くないなぁ。ボケて!」 「これ、そういう番組じゃねぇからな!?」 「はい、朱雨くん早かった!」  手を上げた朱雨を、綺悧は指さす。
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