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26-10
「だから、来月! Isolation act.3で会おう!」
フロア全体から沸き上がる歓声が聞こえた気がした。
「行くぞ! ラストだ!!」
綺悧のスイッチが入った。
「お前らかかってこい!!」
そこにはもう、可愛らしい彩人はいない。戦意で瞳をギラつかせる綺悧が叫ぶ。
「Illuminati!!」
間髪入れず、構える暇を与えずに攻め込んでくる総攻撃。
息つく暇を与えないこの激しい曲は、ベルノワールのラスト定番曲だ。
ハリケーンのように吹き荒れる音が、フロアを炎の海にする。体感できるはずのないその温度が熱い。メンバーとファンの、死力を尽くした殴り合いだ。
その勢いのまま叫び喚く朱雨のギターソロの後に入る、雲の切れ間から射す光のような礼華の可憐なフレーズ。それを断ち切る綺悧のシャウト。
理性も、良識も、何もかもが意味などないと言うように、現実を蹴散らして行く。全ての予定調和が、同調圧力が崩れ去って行く。そこに残るのは、ベルノワールがそこにいるという、それだけだ。
ギターの弦を力いっぱい叩く音と、ハウリングが交錯する不快な音の余韻の中を、自由に歩くドラムのフリープレイ。残響の中、綺悧の叫びが響き渡り、静寂が訪れた。
すっかり取り込まれていたことに気付いて、我に返る。
和馬も黙ったまま、画面をじっと見つめている。
床に倒れていた綺悧がゆっくり立ち上がるのを合図に、メンバーたちは楽器を下ろし、カメラの前に整列した。
「ありがとうございました! また会おうね!!」
綺悧がカメラに向かって、そう挨拶をすると、5人揃って深いお辞儀をする。
そして一人一人、カメラに手を振ったり投げキッスを飛ばしたりしながら上手に去っていく。そこに小さめの音でオーバーラップするHate or Fate。最後に去る夕がカメラの向こうにスティックを投げる。床に落ちるカラン、という音が微かに聞こえたのはご愛嬌だ。
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