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27-1
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ユウセイが、カウンターで烏龍茶のグラスを握りしめて貧乏ゆすりをしている。
「やべーっすよ。人生最高に緊張してる」
裕奈が、ユウセイと話をする為に選んだ場所は、サンダー&ライトニングだった。
カウンターから一番離れたテーブルに、「Reserved」と書いたメモ用紙が置いてある。
彼女はまだ来ていない。
「もっとギリギリに来れば良かったんじゃないですか?」
しおんが笑いながら尋ねると、彼は首を振る。
「昨夜っから、マジで寝れてねーんだよ。じっとしてらんねー」
彼女からの返答がどうなのかということが、彼の頭の中を占拠しているのだろう。まるで少年のように、不安と期待が入り交じった表情でそわそわしている。
「ビールか何か呑むか?」
和馬の勧めにも、頷くことはない。
「いや、これは素面じゃねーとまずくないすか。酔っ払ってする話じゃないっすよ。なぁ?」
しおんに顔を向けて同意を求める。
「まあ、確かにそうですよね。でも酔っ払ってなきゃいいんじゃないですか?」
この様子では、彼は呑んだところで酔えない気がする。
「ま、話が終わってから祝杯にしようや。なあ、ユウセイくん」
「祝杯になりますかね。残念会になりませんかね」
「おいおい、弱気だな」
「弱気にもなりますよ。何年越しだと思ってんすか」
「知ってますけど、大丈夫ですよ」
しおんだけは彼がもらう裕奈の答えを知っている。それに向けて、彼のテンションをどうにか持ち上げておいてやりたい。
「あんだけデートも断られたし」
「結局デート出来たじゃないですか」
「俺が必死なのが哀れやったんやないかな」
「もう。自信満々のモテ男はどうしたんですか」
「それとこれとは別だろうよ」
力を込めた指先が白くなっている。
「いいから、リラックスして下さい。それじゃちゃんと話聞けないでしょぉ?」
しおんは彼をそう宥めて、グラスを握り締めている指を一本ずつ引き離す。
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