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27-2
「いいですかぁ? 裕奈ちゃんは、ユウセイさんときちんと話をしに来るんです。落ち着いて聞いて下さいね?」
「お…おう」
「ワンマン全国ツアーを全部ソールドさせた人が、緊張しないで下さい」
「それは大昔の話やん…」
「大昔とか関係ないです!」
「別にあれ、俺一人でやったわけじゃねーし」
サイレントラヴァーズが成し遂げたそれも、今の緊張感にはかなわないらしい。
かなわない、と言うより、全くの別物なのだろう。わかる気はする。
「和馬さんも、これくらい緊張しましたよね!?」
「いや…そこまでは」
「ちょっとちょっと、緊張したって言って下さいよ!」
「割と何だ、自然に…」
その時のことを思い出し、しおんはくすくすと笑う。彼は腕の中のしおんに、プロポーズをしてくれた。彼が言うように自然に、ではなく、少し力が入っていたのは、しおんにも伝わっていたが。
「うーん、そんな感じだったかなー?」
「返事聞くの緊張しませんでした!?」
「俺、即答したから緊張する暇なかったんじゃない?」
「だな」
ユウセイは頭を抱えてカウンターに突っ伏す。
「俺の気持ちなんかわかんねーじゃないすか二人とも!」
「あ、何かごめんなさい」
笑いながら軽く謝ると、彼は大きなため息をつく。
「…返事なんかいくらでも待つ気でしたけど、実際待ってみるとやべーっすよ。フェードアウトされるんとちゃうかとか…」
「でも、あれから裕奈ちゃん、はなまる行ってましたよね」
「来てた。来てたけど、どっちだか全然読めなくてな。逆にいろいろ…」
「一回、その色々は置いときましょ? 裕奈ちゃんから聞かない限り、本当はどう思ってるのかわかんないじゃないですか」
「あー、うん、そうだなぁ。そうだよなぁ」
顔をあげたは良いが、まだそわそわと落ち着かない様子のユウセイに、手元のチョコレートを手渡す。
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