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27-3
「はい、甘い物食べると落ち着きますよ」
「サンキュー」
彼は素直に受け取り、フィルムを解いてチョコレートを口に入れる。
カウンターに伏せておいたスマホを返して時間を見ると、間もなく約束の19:30だ。
「そろそろ裕奈ちゃんも来るかなぁ」
「…っ」
ユウセイの動きが止まる。
「まだ! まだ来てないですから!」
「でも来るだろ」
「来ますよ。待ち合わせしてるんですから。逆に来なかったらどうするんですか」
「…困る」
「でしょぉ? はい、深呼吸して下さい」
彼はゆっくりと息を吸い、一瞬止め、吐き出し始める。
その時、入口のドアが開いた。
ユウセイは思い切り噎せて咳き込む。
「おいおーい」
和馬はカウンターの中から手を伸ばし、苦笑しながらユウセイの肩を叩く。
しおんが入口に目をやると、裕奈は立ち止まってしおんに手を振った。
「ご案内しますね」
近くにいた颯太が、彼女こそが待ち人だと察してすぐに彼女の元に行き、予約済の席にエスコートする。
「はい、ユウセイさん、行ってらっしゃい」
「俺らはここで見守ってっからよ」
「…残念会付き合って下さいよ」
「祝い酒だよ」
彼は立ち上がり、裕奈の待つテーブルに歩いて行く。
裕奈は笑顔で彼を迎えた。彼女も少し緊張している様子だ。
控えていた颯太が、オーダーを聞いてカウンターに戻って来る。
「ユウセイさんは烏龍茶」
「真剣だなあいつ」
「真剣じゃないわけないでしょ」
「裕奈さんは、銘柄何でもいいからバーボンロックで」
「酒豪か」
「俺の次に呑めるよ?」
和馬はすぐにそれぞれを用意して、颯太に持たせる。颯太はそれをスマートにサーブすると、こちらに戻って来た。
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