24人が本棚に入れています
本棚に追加
27-5
それから、きっちりと背中を伸ばして座り直し、頭を深く下げる。
裕奈は笑って首を振り、頭を下げて返す。
顔をあげた彼は、裕奈に問いかける。裕奈は苦笑して首を振り、少し話す。
ユウセイは再び頭を下げ、真顔で何かを言いかけて小さく首を捻る。
それから、今度は落ち着いて立ち上がり、裕奈に向かってゆっくりとお辞儀をした。
裕奈に促されて着席すると、彼女に語りかける。一つ一つ、丁寧に。裕奈もそれを一つ一つ、しっかり受け止めて頷く。
そして、ユウセイはもう一度裕奈の手を取る。
彼が裕奈を見つめる目線は、もう揺らがない。自信があるとかないとかではない。ただ一つ、自分が考えて出した結論だけを信じて、言葉に換えて裕奈に伝える。
裕奈は穏やかに笑顔を浮かべて、頷いた。
ユウセイは、彼女の手をぐっと引き付け、乗り出すようにしてあれこれと話し始める。裕奈は空いている片手で、笑いながらユウセイの肩を押す。
「あ、多分話決まったな、あれ」
「みたいだね」
「からかってやりてーなー」
「もうちょっと待ってあげようよぉ。いい感じだから」
和馬はいたずらっ子のように目を輝かせてうずうずしている。それを制しながら、和馬の方へ向き直る。
「凄いなぁ。26年も両片想いって」
「りょうかた?」
「両方が片想い」
「ああ、両想いだけど片想いってことか?」
「そうそう。何だかんだあったけど、やーっと収まってくれてほっとしたぁ」
しおんはぐっと伸びをする。正確には、それが何年間のことかは本人にしかわからないところだけれど、長かったことだけは確かだ。
途切れそうになっていた二人を繋ぐ糸は、どれだけ細くなっても切れなかったのだろう。それが赤いのか青いのかはわからないけれど、この二人の間にしかない、とても強い糸。
「俺もほっとしたわ。これでユウセイくんの泣き言聞かなくて良くなったな」
笑う和馬に、ニヤッとして言う。
「わかんないよぉ? 喧嘩する度に泣きついて来るかも」
「喧嘩するか?」
「絶対するねぇ。裕奈ちゃん、めちゃくちゃ強いから」
そう言えば、和馬は二人が話しているところを見たことがなかった。対等にバンバン言い合うのだから、これからぶつかることもあるだろう。それでも、その程度のことで離れる二人ではないはずだ。
最初のコメントを投稿しよう!