24人が本棚に入れています
本棚に追加
27-6
振り向いて見ると、仲良くスマホの画面を覗き込んで何か話し合っている。
「式するのかなぁ」
「どうだろうな。ユウセイくんはそこまで頭まわってねーと思うぞ」
「俺もそう思う。イエスかノーかでいっぱいいっぱいだったもんねぇ」
「どっちも前回は式してんのか?」
「聞いたことないなぁ。ユウセイさんはしてなさそうだよね。詐欺だったけどおめでた婚だったから」
「いや、どうだろうな。やらされてる気もすんぞ」
「あー、あんだけの嘘つく人だったんだもんねぇ。無駄遣いさせられてそぉ」
卑怯な手段を使ってでもユウセイを手に入れたかった相手だ。それを見せびらかす機会になる結婚式はやりたがったに違いない。舞い上がっていたその時のユウセイなら、易々とその手に乗ってしまったであろうことは想像に難くない。
「再婚だしどうすんのかな」
「パーティーくらいやって欲しいなぁ。ちょっと派手にお祝いしてあげたい」
今まで彼女が押し隠して来た想いが、やっと成就し、親子が対面できるという二つの喜ばしい出来事。賑やかにおめでとうと伝えたい。
「やらねーっつったら、しおんたちが主催でやってやりゃいいじゃん」
「あっ、そうだね! 俺たちもそうしてもらったんだし」
自分たちは結婚式など考えてもみなかったけれど、雄貴が新年会という名目で、サプライズの式を挙げさせてくれたのだ。その時の言葉にできない程の嬉しさと感謝は、いつまでもはっきりと脳裏に残っている。
和馬もきっとそうなのだろう。会場となったのは、正にここだ。彼の目は、その時誓いを交わしたステージに向けられている。
「じゃ、今度は俺が誓いのキスさせちゃお」
「やってやれやってやれ」
神父役を務めた雄貴に押される形で、しかし、最終的には彼自ら選択した誓いのキス。彼はとても恥ずかしがったけれど、きちんとキスをしてくれた。
「あれからもう一年以上経つのかぁ」
「早いな」
「もっとゆっくりでもいいのにねぇ」
彼と過ごす時間が、少しでも長くなればと、そう願わずにはいられない。
裕奈もそうだろうか。24年間の空白は、今の彼女にとってどんな時間なのだろう。しかし、彼女は明るくこう答えるはずだ。「それは後悔してない」と。
フロアから颯太が戻って来て、和馬に声をかける。
「店長、ちょっとBGM下げてもいいですか?」
「どうした?」
「ユウセイさんからです」
「いいけど?」
テーブルの方を見ると、ユウセイが手を合わせて頭を下げている。
最初のコメントを投稿しよう!