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 振り向いて見ると、仲良くスマホの画面を覗き込んで何か話し合っている。 「式するのかなぁ」 「どうだろうな。ユウセイくんはそこまで頭まわってねーと思うぞ」 「俺もそう思う。イエスかノーかでいっぱいいっぱいだったもんねぇ」 「どっちも前回は式してんのか?」 「聞いたことないなぁ。ユウセイさんはしてなさそうだよね。詐欺だったけどおめでた婚だったから」 「いや、どうだろうな。やらされてる気もすんぞ」 「あー、あんだけの嘘つく人だったんだもんねぇ。無駄遣いさせられてそぉ」  卑怯な手段を使ってでもユウセイを手に入れたかった相手だ。それを見せびらかす機会になる結婚式はやりたがったに違いない。舞い上がっていたその時のユウセイなら、易々とその手に乗ってしまったであろうことは想像に難くない。 「再婚だしどうすんのかな」 「パーティーくらいやって欲しいなぁ。ちょっと派手にお祝いしてあげたい」  今まで彼女が押し隠して来た想いが、やっと成就し、親子が対面できるという二つの喜ばしい出来事。賑やかにおめでとうと伝えたい。 「やらねーっつったら、しおんたちが主催でやってやりゃいいじゃん」 「あっ、そうだね! 俺たちもそうしてもらったんだし」  自分たちは結婚式など考えてもみなかったけれど、雄貴が新年会という名目で、サプライズの式を挙げさせてくれたのだ。その時の言葉にできない程の嬉しさと感謝は、いつまでもはっきりと脳裏に残っている。  和馬もきっとそうなのだろう。会場となったのは、正にここだ。彼の目は、その時誓いを交わしたステージに向けられている。 「じゃ、今度は俺が誓いのキスさせちゃお」 「やってやれやってやれ」  神父役を務めた雄貴に押される形で、しかし、最終的には彼自ら選択した誓いのキス。彼はとても恥ずかしがったけれど、きちんとキスをしてくれた。 「あれからもう一年以上経つのかぁ」 「早いな」 「もっとゆっくりでもいいのにねぇ」  彼と過ごす時間が、少しでも長くなればと、そう願わずにはいられない。  裕奈もそうだろうか。24年間の空白は、今の彼女にとってどんな時間なのだろう。しかし、彼女は明るくこう答えるはずだ。「それは後悔してない」と。  フロアから颯太が戻って来て、和馬に声をかける。 「店長、ちょっとBGM下げてもいいですか?」 「どうした?」 「ユウセイさんからです」 「いいけど?」  テーブルの方を見ると、ユウセイが手を合わせて頭を下げている。
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