27-7

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 和馬はBGMの音量を下げて、ユウセイを振り返る。彼は指でOKのサインを作って返した。 「何するのかな?」 「なあ?」  見ていると、裕奈が電話をかけ始めた。 「あ、多分彩人くんだ」  真っ先に報告するべきは、当然彩人だろう。勿論、メッセージなどではなく、直接電話で。 「そうだな」  彩人がすぐに出たのだろう、一言二言話すと、スマホのカバーをスタンドにして、テーブルの上に置く。そして、二人揃って画面を覗き込んで手を振る。フェイスタイムに切り替えたようだ。  何を話しているのかははっきりわからないが、その声が明るいことだけは伝わって来る。初めは少し緊張した面持ちだったユウセイも、すぐに顔を綻ばせる。 「ユウセイさん、彩人くん見て可愛いって言ってたもんねぇ」 「そうなのか」 「うん。YouTubeで見てね、期待出来るヴォーカルだ、可愛いな、対バンしたいって」 「親の贔屓目なしで、んなこと言ってたのか。何かすげーな」 「ね? 後ね、歌ってると鬼だって言ってたんだけど」 「ああ、それわかるな」 「でしょ? でね、ユウセイさんの昔のあだ名、何だったと思う?」 「ん? 何だろうな…」  和馬は少し考え込む。 「あのね、般若」  くすっと笑ってそう明かすと、和馬はユウセイをじっと見て、声を立てて笑い出す。 「ああ! 般若な! 納得だわ!」 「似てるでしょぉ?」 「似てる! 般若と鬼の親子とか、地獄だな!」 「ねー? 早くツインヴォーカル見せてもらいたいなぁ」 「俺もそれ、見てーわ」  ユウセイは心底嬉しそうに破顔している。その笑顔を見ているこちらまで、暖かい気持ちになる。  裕奈も、これまで見たことがないくらいに幸せそうな微笑みを浮かべている。  きっと、電話の向こうの彩人も嬉しそうにしているに違いない。
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