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 これまで黙っていた裕奈を恨むような陰はまったくなく、寧ろ、伝えてくれたことと、彩人を育ててくれたことに対する感謝で溢れんばかりだ。 「ありがとうございました」  裕奈は横でぺこりと頭を下げる。 「おめでとぉ!」 「おめでとう。よし、祝杯だな? ユウセイくん」 「あざーっす!」  彼らはカウンターのスツールに腰掛ける。 「裕奈ちゃん、良かったね。俺もほっとしたよぉ」 「ありがと。聖名にも早く報告しなきゃなぁ」  笑う裕奈は、いつにも増して綺麗に見える。 「神奈ちゃんとナナちゃんは、びっくりするだろうね」 「へへ、そうだね。何て言うかな」 「楽しみだねぇ」  そこへ、颯太が綺麗な青い瓶を携えて現れる。 「祝いだよ。呑もうや」  和馬はそれを受け取って、カウンターに置く。モスカート・ダスティ。そのスパークリングワインの甘さは、今の二人にぴったりだろう。 「いやいや、和馬さん。俺、自分で下ろすっすよ」 「いいんだよ。めでてーんだからよ。その代わり、これから二人で呑みに来いよ」 「ありがとうございます。そうします」  裕奈はにっこり笑う。颯太はシャンパングラスとワインオープナーを手際良く並べ、フロアに引き下がる。 「そんじゃ…」  和馬はワインオープナーをコルクにねじ込み、レバーを下げる。 「ユウセイくん、裕奈ちゃん、おめでとう!」  彼がコルクを引き抜くと、気持ちのいい音がポン、と鳴る。 「おめでとぉー!」  手を叩くと、彼らは顔を見合わせて照れ笑いをする。  和馬はグラスにそれを注ぎ入れ、それぞれの手元に置く。 「乾杯はしおん、お前な」 「うん。えーっと…」  少し考える。どんな祝辞を捧げようか。 「長い道のりだったけど、二人の想いが叶って、俺も嬉しいです。末永くお幸せに。乾杯!」  軽くグラスを打ち合わせ、グラスに口をつける。甘くて優しい味わいが、これからの彼らの人生であれば良いな、と思う。
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