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27-10
「どーよ、突然でけー子のパパになった気分は」
「最高っすね。めちゃくちゃ可愛いんすよ。パパって呼んでいいですか? って」
23になっていたとしても、綺悧ならばそれが可愛らしく言えるだろう。
ユウセイはとても素直に、血を分けた可愛い息子が存在することを喜んでいる。
「あんな可愛くて、どこに俺の遺伝子が入っとんやろ」
「ユウセイさん?」
裕奈がじろりと隣のユウセイを横目で睨むと、彼は舌を出して謝る。
「似てますよぉ? この辺り」
しおんが、彼の眉骨と額、そして鼻筋を指さすと、彼は首を傾げる。
「この辺?」
「うん。そっくりです。だから歌うと鬼になるんですよ」
「俺が般若だからってか」
「声もちょっとな。低音がやっぱ似てるわ。ビブラートがもっと上手くなりゃ、多分そっくりだ」
和馬は声に言及する。
「俺はあんなに高音出ねーすけどね」
「音域では息子の勝ちか」
和馬が笑うと、ユウセイはニヤリと笑って親指を立てて見せる。
「今から広げてやりますよ。俺も現役やから、負けてらんねっす!」
「おう、親子競演楽しみだな」
ユウセイはとても楽しそうだ。彼も、綺悧が自分の息子と聞いて、真っ先にそれを想像したに違いない。
「入籍とか式はどうするの?」
「籍は、4月1日に入れようかって、さっき話してたんだ」
「エイプリルフール?」
それは結婚記念日として大丈夫なのかと聞き返してみると、裕奈はケタケタ笑う。
「そうだけどね。ちょうど彩人の誕生日なんだ」
「そっか! それいいね。絶対忘れないし」
「彩人も何とかスケジュール空いてるし、宵闇に報告してから来るって」
「ユウセイさんと初対面だね」
「めちゃめちゃ楽しみにしてるよ、あの子も」
ユウセイは、ここへ来た時とは違う様子でソワソワしている。
「やべーな。美容院とか行っといた方がええかな」
「それは関係なく、そろそろ行ってきたら? 白髪見えてるし」
「お?」
裕奈に言われて、ユウセイはスマホを出してカメラを起動し、インカメラで自分の髪を見る。
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