27-11

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「あー、わかんねぇ」 「帰ってから見て」  裕奈は呆れたように言って、ボトルに手を伸ばす。それを先に取って、グラスに注いでやる。 「これ、呑みやす過ぎるね。美味しいからヤバイ」 「でしょ。裕奈ちゃんなら5本はいけるでしょ」 「んー、4本かな」 「いやいやいや、待ってくれ。今日1本しか用意してねーから、この後は別のもんにしてくれ」  和馬が慌てて断りを入れる。裕奈とくすくすと笑い合う。 「で? 式はするの?」 「どうする?」  裕奈がユウセイを振り返って尋ねると、ユウセイは笑顔で返す。 「裕奈がやりたいようにやれよ」 「そう? なら、簡単でいいからやりたいかな。人前式とか、レストランくらいで。もうこの歳だから、派手なドレスは勘弁だけど」 「着りゃいいやん」 「誰が、ババアがディズニープリンセスみたいなの着てんの見たいのよ」 「誰がババアだよ。着たけりゃ着ろって」 「そもそも、あのふわーっとしたの趣味じゃないんだよ」  それを聴きながら、少し考える。彼女なら、マーメイドラインのすっきりしたドレスが似合うのではないだろうか。チャペルで挙げるのでなければ、色も白でなければならないことはないだろう。 「いつ頃?」 「まあ、いつでもいいかな。コロナが大人しくなってからの方が招待し易いけど」 「じゃあ、準備の時間は充分ありそうだね」 「そうだね。とりあえず籍だけ入れて…それから家探そうかって、ねぇ?」 「ああ。今更慌てるこっちゃねぇし」 「式やるなら、それから計画始めるかな」 「やろうよ、式! いいよー?」 「しおんちゃんもパーティーしたって言ってたね」  しおんは頷いて返す。経験しているからこそ、裕奈にも体験してみて欲しい。 「ドレス、俺に作らせてよ」 「あっ! そうか! しおんちゃんプロだったじゃん」 「そうだよぉ。作りたい。裕奈ちゃんの好きなのに出来るよ?」 「それならいいなぁ。オーダーメイドだ」  記念すべき日の一着が完全にオーダーメイドというのは、希望した全員が出来ることではない。  それに、友人の大切な一着を作らせてもらえるのならば、作る側としても何度もない経験だ。
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