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「『爺さんが失神した!』と驚いた声のおばあさんが登場しました。この間10分未満なんですよ。
怖くないですか?」
「確かに、ここまで流れるような出来事そうそうないわね」
怒涛も怒涛。
2時間の映画をギュッと短く語れと言われたお題が出たら、こう答えるしか無いという程に。
こずえさんはきれいにまとめてはくれましたが、本当はその先があります。
「でも、そのあとで家族会議が持たれまして。終わったのが夜中だったんです」
「だから眠いのね。……それでクローラはここを旅立つ決心がついたのね」
「はい。短い間でしたが、お世話になりました」
私が深々と頭を下げ戻すと、こずえさんは驚いた顔を見せます。
「もしかしてクローラ?」
「はい。本日戻ります!」
「ワン?」
私の言葉が分かったかのように丼までもが、目をまん丸くし穴を開けんばかりに凝視してきます。
「ありがとうございました」
私はもう一度、紫のマダムと年老いた犬に深々とお辞儀をしました。
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