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ここを去る子たちは、決まって急です。
と言っても、今回の速さは異例で2回目です。
「ふふ」
私はクローラを見送った後。
店内の整理を始めました、整理というよりかは店じまいの方が、
あっているかもしれません。
軽く掃除をし、手書きのポスターを描き終え、店の前に出てシャッターを閉めます。
「よし」
そのポスターには『お休み中。ご用の方はお電話ください』と、書きましたが、
人の目に映るためには、少しだけ低すぎると、少し浮きながらポスターの位置を直し。
私は3回鍵が締まっているかを確かめ、2階へと向かいます。
「おや?」
階段を上がっているさなか、電話のベルの音に気付き早歩きで部屋に入りました。
まるで今すぐ出ろとばかりになり続けるベルに、私はかけてきた人物が誰だかすぐにわかりました。
「乙女ですか?」
「え!ふ、風鈴?」
「ええ、風鈴ですよ。ふふ」
やはり乙女からの電話でした。
クローラが出て一時間もしないうちにかけてくるなんて、何が起きたのでしょうか。
「風鈴、孫が世話になったね」
「あ、ふふ。そう言うことですか、クローラが来てくれて私も楽しかったですよ」
電話口で、ホッと胸を撫でおろすかのような吐息に、
乙女がどんな顔をしているのかが伺えました。
「それにしても。乙女のお孫さんがくるなんて、
想像もしてませんでしたよ」
「悪かったわね、押し付けるようなことしちゃって」
「ふふ、不安定なクローラにお強く言えなかったんでしょうから。
小さい自信をつけることでクローラには良いきっかけになったようで、
日々成長を見せるクローラを見れて私は嬉しかったのですよ」
「本当にありがとう。風鈴」
「ふふ」
長い長い、時を重ね。奇跡的なことがポツンとあって。
こうやって笑えるひと時が合って、私はこの国に来てよかったと思いました。
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