友達の好き。

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友達の好き。

「内裏であなたが病に臥せっていると聞いて驚いてこうして訪ねてきてしまいました」  そう話す瑠璃の中将の顔は少し赤らんでいるように見える。  宰相の中将は内心とても嬉しくは思ったけれど、そう見せることも申し訳ないと思うと素直に笑みを見せる事も出来なかった。  静かにここ数日の宮中の様子を話す瑠璃。  その唇から漏れる吐息。かわいらしく動く様を見るにつけて、どうして自分はこの珠玉を諦めてしまったのか、どうして裏切るような真似をしてしまったのか、その後悔と罪悪感とに苛まれた。  今からでも手を伸ばしてみたい。  いや、もしかしたら、瑠璃もそれを望んでいるのではあるまいか。  勝手な理屈だとは充分理解しつつも、目の前で自分の為に頬を染め語る瑠璃が愛おしく思え、一線を超えてしまいたくなる。 「どうしましたか、お身体に触りましたか、顔色がすぐれないようですね。すみません。またお伺いしますね」  そう話を締めくくり席を立つ瑠璃を思わず引き留めるように手を伸ばす。  青い顔をしてふらつく宰相中将をとっさに抱きとめる瑠璃。 「大丈夫ですか」  その言葉に我慢が出来なくなった彼は、そのまま勢いのまま瑠璃を抱きしめた。  ☆☆☆  宰相の中将は病気だったのか。  最近よそよそしかったのも体調がすぐれなかった為なのだと思えば、ちょっと心が軽くなる。  ああ。あたしは中将が好きだったのだ。  いつも一緒にいてくれた中将。歌でも合奏でも気持ちが通じ、気のおけないさまをここち良く感じて。  友達としての好き。  たぶん、そう。  まだ恋とかじゃ、ない、はず。  きっとそう。  大人の恋は、きっと、たぶん。まだあたしにはわからない。  ほんわかとした好き。そんな感じ。  でも……。  あたしが男を演ってるから友達で居てくれるんだろうな。  そんな事をふと考えると少し悲しくなる。  女だとバレたら友達で居られない。  それは嫌、だ。  そんな事考えつつ歩いているとある考えが頭をよぎる。  そういえばさっきの女房たちの会話、よく考えたら……。  もしかしてあれ、あたしと中将の事男色のネタにしてたって事……?  カーッと顔が熱くなる。  ああ、どうしよう。恥ずかしくって中将の顔まともに見れないよ。
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