Fall in Love -Prologue-

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Fall in Love -Prologue-

俺の仕事は セレクトショップのオーナー 兼 コーヒースタンドのバリスタだ。 表参道にあるセレクトショップは (月)~(金)11時から18時の営業。 【予約優先制(土曜は不定期営業)】 コーヒースタンドは同じフロアで (土)or(日)12時から18時の不定で営業。 【一見さんお断り】 これからもわかるように、俺は金儲けがしたいから店をやっているわけじゃない。 家族や友人、その友達など大事な人のためにしているだけ。 だから少しでも居心地の良い空間や良いものを提供できるように、スタッフも俺のお眼鏡にかなった凛子しか雇っていない。 凛子は25歳。 某アパレルショップで働いていたのを俺がヘッドハンティングした。 見た目は可愛く、おしゃれ、言葉遣いも丁寧でかなり気が利く。 周りを見渡せて落ち着きも兼ね備えているからカリスマ店員って言葉を与えても申し分がない。 センスも抜群に良いのでディスプレイやたまにセレクトを任せたりもしている。 『大樹さん、おはようございます。』 『凛。相変わらず早いねー。』 『水曜日は新作の入荷日なので楽しみで。』 『欲しいって言ってたタイダイのドロップショルダーも入ってきてんじゃないかな?』 『ホントですか?買います!』 『後で、スナップも撮って良い?凛が着たのをオンラインとかインスタにあげるとすぐ、Soldoutするし、来店予約も入るからさ。』 『了解です!今日ご予約は3件入ってます。』 彼女には元々、顧客がついていたのもあるしインスタのフォロワーもかなりいるから影響力がでかい。 働かなくても食っていけるほどの資産は俺にはあるけれど うちが一見お断りで、しかも資産を使わずとも利益を出せているのは凛子の力が大きい。 『はよー。』 と入り口で声がした。 『おはようございます。奏さん。』 と凛子が出迎える。 『はよ。凛子ちゃんこれ。』 と奏はパンが入った袋を渡す。 『すぐ用意するので、座っててくださいね。』 『奏、おはよ。今日のパンなに?』 『Du pain のクロックムッシュ。』 『まじか、あれ好きだわ!』 奏はここから5分くらいの所にあるデザイン事務所でグラフィックデザイナーをしている俺の友達だ。 10時出勤で朝はゆっくりだし、ひとり暮らしだから ここに俺が店をオープンさせてからは、一緒に朝飯を食うのが日課になっている。 大体、9時過ぎ頃に奏がパンを持ってきてくれるから俺がコーヒーを淹れて凛子が用意をする。 『やった!今日は凛子ちゃんのプリンつき。』 『奏さん、前に美味しいっていってくれたので…。』 『毎日、食べたいぐらい好きなんだよね。』 『大げさですよ(笑)』 『毎朝、凛子ちゃんがコーヒーとプリン作ってくれたら最高!』 “なにそれ…。 今のアラサー男が言うセリフか? 仮にもお前、イケメンデザイナーとか言われて雑誌載ってなかったっけ? もっとガツンと押せよな。“ 『これ今日良かったら食べてください。 奏さん、ロコモコ食べたいけど自分では作れないって言ってたから。』 『え?作ってくれたの?』 『私も今日のお弁当にしたので。』 “はっはーん。凛子は男の胃袋を掴む作戦か。王道は悪くない。” 俺の目から見て 奏がここに毎日来るのは、朝飯もあるけれど9割凛子に会いたいからだ。 そして凛子もまた、奏の事が気になっている。 2人からはなにも言われていないけれど、俺の恋愛的な勘は百発百中だ。 俺から2人に手を差しのべて上手くいかせるのは簡単なことだけれどそれはしない。 欲しいものは自分で手にいれるべきだ。 最終なんらかの理由で別れることはあったとしても、俺は相談された恋愛は必ず成就させてきた。 巷の結婚相談所やマッチングアプリなんかより数倍、成功率は高い。…と思っている。 コーヒースタンドが変則的な土日でしかオープンしていないことや 一見さんお断りな事はすべて恋に悩める人たちのため。 そう、ここは 知る人ぞ知る、恋愛相談所だ。 俺の仕事はセレクトショップのオーナーで コーヒースタンドのバリスタだけれど 本当のところは “恋愛マスター“ だと思っている。 10時前、凛子からもらったお弁当を持った奏が嬉しそうに仕事へ向かった。 見送りを終えた凛子は 『大樹さん、今日お時間ありますか?』 と言ってきた。 返事をする前にパッとスマホを見ると “明日の土曜、店やってる?相談したいことあって。” と奏からもLINEが来た。 先に言っておくけど 俺はすでに最愛の女を手にいれていて来月結婚式も控えている。 人の恋愛にしか興味がない痛い男ではない。 2人には 『時間ならたっぷりあるから、気がすむまで聞いてやる。』 と言った。 来年、こいつらも結婚だな…。
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