Vow

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私は明日、結婚をする。 相手は表参道で自称 【恋愛マスター】を名乗っていて 他称 【恋愛大明神】と呼ばれている セレクトショップオーナーの大樹。 私と大樹が付き合いだしたのは 毎日毎日、私に会いに来て 毎日毎日、私に告白してくれるから 絆されちゃったからだけど 私が大樹のプロポーズを受けたのは 毎日毎日、好きだと言ってくれて 毎日毎日、結婚しようと言ってくれることに 愛されている幸せを感じて嬉しかったから。 この世に幸せの種類はたくさんあるけれど 私は女にとって男に愛される幸せは 何よりも格別な事だと思っている。 私が知り合った頃の大樹は 女の経験は多くても 恋愛そのものに関しては疎かったし 女の扱いが得意なわけでも 女心をわかっているわけでもなかった。 今でこそ、恋愛マスターだとか恋愛大明神なんて言われているけれど あの頃の大樹はただ真っ直ぐに、伝えたいことを伝える嘘のないがむしゃらな男だったと思う。 大樹は 『美波が俺の初恋の相手だ。』 と真面目に言う。 『これは運命なんだ。』 と恥ずかしげもなく言う。 『本当は1分でも1秒でも早く美波を手に入れたいけれど一生かかっても良い。』 と優しい声で言う。 付き合う前、大樹が自分の事を少しでも知って欲しいって言って 私を家に招待してくれたことがあった。 その時もやっぱり“付き合ってほしい。“って言われたから 『赤い糸で繋がってるのが目に見えてわかるなら、付き合ってもいいよ。』 と冗談で言った。 そしたら大樹は 『少しだけ待ってて。』 と言って 赤い毛糸で私と自分の小指を結んだ。 あの時は確か、赤い糸なんて大樹の自宅にはなくてクローゼットにあった赤ニットをほどいたんだっけ。 ダサいし、バカなの?って思うけれど そこそこイケメンの年下男子にそんな事をされれば 不倫とか二股とか略奪とかを経験した事がある女には案外グッと来る。 私のためだけに一生懸命作ってくれた料理は どんな高級レストランよりも美味しく思えたし 慌てて片付けたのかな?って思う部屋は 綺麗な夜景が見えるホテルよりも居心地がよかった。 そして繋いでくれた赤い糸は ブランド品をもらうよりも嬉しかった。 大樹は私を計ることの出来ない大きな気持ちで包んでくれる。 今となれば私の方が大樹の事を好きだと思う。 いつの間にか仕事中も寝る時も頭から離れなくなっていて 夜中に声が聞きたくなって何度も電話をしたりした。 働かなくても生きていけるほどお金を持っているのに 『大事な人に居心地のいい空間を提供したい。』 とか言ってお店をオープンさせちゃうあたり 超がつくほど愛情深い人なんだって思う。 恋愛大明神って言われるのはきっと大樹が 誰相手でも惜しみ無く愛情を与えられる人だから。 『ずっとずっと一緒にいよう。 美波の隣に俺がいて、 俺の隣に美波がいる。 それだけでいい。 一生の愛を誓うから ずっとそばで笑顔を見せて欲しい。』 エンゲージリングと一緒にもらったメッセージカードを私は手帳にはさんで持ち歩いている。 年下でバカでわがままで寂しがりで小さいことですぐにスネるけどそれも全部含めて今は大好き。 心配で束縛してくるところも可愛いと思える。 明日、私は結婚をする。 相手は私の最愛の人であり ある意味、最初で最後の男。 『健やかなるときも、病めるときも 喜びのときも、悲しみのときも 富めるときも、貧しいときも 大樹を愛し、敬い、慰め、遣え 共に助け合い、この命ある限り 真心を尽くすことを誓います。』
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