Two as one -girl-

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Two as one -girl-

『ねえ、そろそろ私の事好きになってくれた?』 今日もまた同じ質問をする私に 大地は満面の笑みで 『なってない。』 って答える。 『おかしいなぁ。もうそろそろ好きになってくれてもいい頃なんだけどな…。』 『あのさ、その“そろそろ。”はいったいどこから来るの?』 『なんとなく?』 『なんだよ、それ(笑) 』 『70%くらいは私の事好きになってると思うんだけど、どう?』 『お前のその自信はいったいどっから来るんだよ。』 『なんとなく?』 と私が答えると 『バカ言ってないで、さっさと仕事もどれ。』 と大地はため息混じりに言った。 私はコワーキングスペースのカフェでバイトをしている大学4回生。 就活は第一志望だった企業に内定をもらえたので、今は週1のゼミ以外はほぼ毎日ここでバイトをしている。 『はい、どうぞ。』 と言ってブラックコーヒーとブラウニーをデスクに置いた。 『サンキュ。でもなんでブラウニーも?』 と聞かれたから 『疲れてそうだったから。それにチョコは脳が若返るんだって。 良かったね、お・じ・さん♡』 と満面の笑みで答えたのは、今日もフラれてしまった私の可愛い仕返し(笑) 大地のそばにいると楽しくて気持ちがフワフワする。 ここでバイトをしていなかったら出会う事のなかった人で 日本人男性62万人すべての人に会ったことはないけれど 私の運命の人は間違いなくこの人だって思う。 大地のことをもっと知りたいけれど 私が知っていることと言えば ①幸村大地・29歳・男・フリー ②共有型のオープンスペースで仕事をするフリーランス ③畑中さんっていう親友がいる。 ぐらい。 毎日バカみたいに気持ちを伝えているのは 本気でフラれるのが怖いから。 いつか私の気持ちが届いて恋人になれる日が来るのかな? “明日こそはちゃんとこの想いを伝えよう。“ って思ってはいるけれど、いざ本人を目の前にすると言えない。 いつからこんなチキンになったんだろう。 たかが知れてるけど狙った男は落とせなかったことないのに…。 大地を目の前にすると駆け引きも若さもなにも通用しない。 私はなんの武器も持たないただの22歳になってしまう。 卒業式を来月に控え、旅行や卒論のゼミ合宿、企業研修があって1ヶ月程バイトに行っていなかった。 楽しく過ごしてたとはいえ この4週間はもちろん偶然会うことはなく、連絡先も知らない私は大地が何をしているのか全然知らなかった。 『ヤバイんじゃない?さすがの1ヶ月放置は。』 『やっぱり亜里沙もそう思う?』 『恋愛にたいしてクールだった香帆が惚れてる男だからねー。もう、女いるかも。』 『えー。冗談でもひどい…。』 『来週、バレンタインだしイベント乗っかってみれば?フラれても卒業目前でバイトもやめるんだし。』 『そうだよね…。亜里沙は?もう一度パリ行くの?素敵な人に会ったって言ってたじゃん。』 『うーん。日本に帰国するって言ってたし…って私の事は今はどうでも良いの。 善は急げ!買いにいくよ!』 と亜里沙に手を引かれて、急遽バレンタイン商戦に参戦した。 勢いでチョコレートを買ったのはいいけれど いつ、どのタイミングで渡したら良いのかな。 1か月ぶりのバイトは緊張と嬉しさで心臓が爆発しそう。 『あれー?香帆ちゃん。今日からバイト復帰?』 『畑中さん、おはようございます。卒業まではまだしばらく時間があるので。今日もラテでいいですか?』 『ありがと。大地とは会った?香帆ちゃん休むこと言ってなかったんでしょ。辞めたのか気にしてたよ。あ、噂をすれば…。』 と畑中さんが言ったので振り返ると 1ヶ月ぶりの大地と目があった。 『大地。香帆ちゃん今日からまたバイトだって。』 『1ヶ月も会えなくて淋しかった?』 といつもの調子で私が聞くと大地は 『寝言は寝て言え。せっかく、静かで快適に仕事してたのになー。また今日からうるさいのがいるのか。』 と私のおでこを小突く。 『ひどーい。』 という私に見たことのないような優しい笑顔で 『香帆、コーヒー淹れて。』 と言って大地はいつものように窓際のデスクに座った。 『あの笑顔は相当嬉しいんじゃない?あいつ、香帆ちゃんがいない間はコーヒー飲んでなかったんだよ?』 と畑中さんが嬉しいことを教えてくれた。 『はい、どうぞ。』 とコーヒーをデスクに置いてしばらく大地の横顔を見ていた。 1ヶ月ぶりに会ってやっぱり好きなことを再確認する。 私の視線に気づいて大地が 『なに?』 と聞いてきた。 慌てて私は 『別になにもない…。』 と言ったけど、でもやっぱり “今日、チョコと一緒に告白しよう。” そう思ったから勇気を出して 『あのっ!』 と声をかけた。 大地は振り返って 『どうした?』 って聞いてくる。 『あのね…。あのね、今日。仕事終わったら…。…。』 いざとなったら言葉が続かない。 大地は少し困ったような笑顔で 『今日、飯でもいくか?卒論終わったんだろ?お疲れ会やってやる。』 と言った。 『ほんと?良いの?』 『そのかわり、俺の仕事が終わってからだから19時にPARCOのパリサンジェルマン前な。』 『うん!!』 今夜こそ、この想いを伝えなくちゃ。 19時だったら一度家に帰れる。 服を着替えて1番可愛い私になって会いに行ける。 チャンスは1度しかない。 私の気持ちを伝えるには今日しかない。 ありったけの気持ちを込めて 『大好き。』 って伝えたい。
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