Identity

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私にとって恋愛は習慣。 ある意味、クセで いつもスキなく恋をしている。 周りの女の子達からは “息を吸うように恋愛をするね。“ ってよく言われるけど 良いように捉えれば “正直で思いきりが良い。行動力がある。“ ってことだし 悪いように捉えれば “節操がない尻軽オンナ。” ってこと。 大抵は後者の意味で言われているのはわかっている。 女性が恋愛に依存せず キャリアを持つことは良いことだし 自立した人を見るとカッコいいと憧れる。 “自分を幸せにできるのは自分だけ。“ の考えはまさに現代の象徴だし それが今時で普通だと思う。 だけど普通レベルの大学を卒業して 中小企業のOLをしている私には キャリアなんて夢のまた夢。 自立していると言っても1LDKの賃貸マンションで一人暮らしをしている程度で よくも悪くも中の中ってところ。 だから私は時代に逆らうかのように “私を幸せにしてくれる王子さま。“ を探している。 私の武器は10人いれば8人は “可愛いですね。” “綺麗ですね。” と言ってくれるこの容姿だけ。 ヒールを選ぶように男を選んで 息を吸うように恋愛をするのは シンデレラのガラスの靴みたいにぴったりと合う人を求めているから。 靴 = アイデンティティ 私がいつも10センチ以上のヒールをはいているのは ヒールは誰よりも賢く自分をデザインする女の子達の客観的ジャッジと知性、サバイバル能力の高さを示してると思うから。 シンデレラだって舞踏会で出会った王子さまに迎えに来てもらおうと ガラスの靴をわざと落として帰ったのかもしれない。 トレンディードラマの肉食系男子も あざとい女だとわかっていながら みんなヒール女子を好んだ。 自分で自分の賞味期限を決めて 一番市場価値の高いときに売りさばくのは 自分のアイデンティティーを確立するため。 だから私は10センチ以上ヒールがある ガラスの靴で恋愛市場に1人乗り込んでいる。 今のご時世 ヒール女子の需要が少なく時代遅れなんてことは百も承知。 至れり尽くせりで 女というだけで価値があった時代はもう終わってしまった。 95年生まれの25歳。 トレンディードラマ風に言うと “女はクリスマスケーキ。” と言われた年と同じになったけど 私は生まれる時代を間違えてしまったから 早朝のドライヤーから深夜のパックまで 自分で自分に手をかけなければ 幸せは掴めない。 女を続けるのはある意味、持続力との戦いだと思う。 この恋愛市場の中で私が求める王子さまは “高学歴・高収入・高身長“ のハイスペック男子と言われる3高のみ。 玉の輿に乗りたいわけじゃない。 専業主婦になりたいわけじゃない。 頑張って女をしてるんだからそれなりの見返りが欲しいだけ。 今日は私の唯一の理解者で彼氏持ちの親友と スマートに仕事をこなす男が集まると噂の スカッシュコートに来ている。 声をかけてきてくれた “3平“ はいたけど見向きもせずターゲットを探した。 “いた!自分史上最高のイケメン。” 王子さまはこの人だと直感した。 コミュニケーション能力を最大限にいかして 全速力でポジティブにかつパワフルに近づく。 パステルネイル ナチュラルメイク ゆるふわカール 男ウケ三原則。 恋の発生まで後15秒。 一瞬で溺れてしまうかも。 もしかしたらもう手遅れかも。 やばっ!めっちゃ気になる。 恋がしたい、愛したい。 人生の旅に靴は欠かせないアイテム。 人の靴をうらやましがることなく 時には小さくなったり 古くなったりして 思いきってはきかえることも 必要になるかもしれないけど 自分の持っている靴=アイデンティティーを 誇りをもって大事にする。 さぁ今、恋が始まった! 『しまった!今シューズだ。 私の戦闘靴、ロッカーの中だ…。』
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