365days

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俺の彼女はバカだ。 バカでまっすぐで人の事すぐ信用してお人好しで怒られてもめげなくて…。 俺とは正反対の女をいつからこんなにも好きになったのかは今となってはもうわからない。 いつの間にか可愛くてしょうがない存在になっていた。 俺は容姿も仕事の腕もピカイチで周りの誰からも一目置かれる。 公私ともに完璧主義者でストイックであるがゆえに 周りからは“ドS”だとか“悪魔“だとか“冷徹人間“だとか まぁまぁ色々言われている。 常に冷静で物事を慎重に見るタイプで 付き合う女には干渉や束縛をしない適度な距離感などを求め自分の時間を大事にしてきた。 だからこそ、彼女みたいなタイプと関わることは俺の人生の中では無縁だった。 彼女は俺の部下で今年の新入社員だ。 やる気は誰よりもあるけれど失敗も多い。 けど、なぜだか憎めなくて冷たくあしらいながらもなんだかんだ助けてしまう。 仕事に一生懸命向き合って、クライアントの意向に全力で対応する姿は好感度が良く取引先にも、もちろん社内でも評価が高い。 俺は彼女の指導係と彼女のペースにのせられていつの間にかサポート役まで買ってでていた。 彼女は会社説明会の時に俺に会ったらしく そこから一途に思ってくれていたみたいで、うちの部署に配属されてから1年後ぐらいに告白された。 その時はもちろん興味もなかったし、俺と彼女が付き合う可能性は極めて0に近かった。 でも、まっすぐに気持ちを何度も伝えてきてくれて どんなことがあっても諦めることなく俺に向き合ってくれて いつも笑顔でいてくれることに 俺はいつの間にか癒され始めていて無くすことや誰かにとられることが嫌と思うようになっていた。 気がついたときには彼女を手放す事の怖さや独り占めしたい独占欲に支配されていた。 1人でいたら 抑えようのない想いが聞こえてくるような 耳を塞いでも鳴り響いてるような感覚に襲われるようになっていて “彼女が好き。“ この単純な気持ちを伝えたくても “10以上年下の女を好きだとか馬鹿げている。“ っていうしがらみが俺にまとわりついてどうしようもない。 そんな悶々とした毎日に正直嫌気がさしていた。 “ひとりきりの方が気楽でいいや。“ ってあれほど思っていたのに 君に触れたい、キスしたい 昨日よりも深い場所で君といたいと思うようになっている自分が怖かった。 コントロールがきかなくなる前に彼女への思いは無かったことにして “上司と部下に戻ろう。“ そう決めた矢先、2人で残業するはめになった。 一生懸命平然を装っていたけど、俺の思いはもう限界で 彼女を家まで送り届ける途中 抱き締めてキスをしてしまった…。 彼女は俺の気持ちが自分に向いたことに心底喜んでくれて俺たちは付き合うことになった。 俺は相手が誰であろうともちろん彼女であっても公私混同はしないし、したくないタイプで 同僚にも付き合ってることは自分から隠したいと言っていたのに 彼女は鈍感で自分の気づかないところでモテていて 告白されて初めて相手の気持ちに気づくから気が気じゃなく 自分から付き合ってると公表してしまったり 今までみたいに厳しく指導できる自信もなく 彼女にはもう強くなにかを言うこともできないぐらい甘やかしてしまいそうだった。 俺はどうしてしまったんだろう。 この先、彼女がもしいなくなってしまったら俺は確実に生きてはいけない。 モノクロームだった俺の世界に彼女は色を与えてくれた。 もう戻ることはできない。 彼女がもし 『私のどこが好き?』 と聞いてきたら俺はたぶん一生言い続けられる。 彼女がもし 『これは運命の出会いだね。』 と言ったら俺はたぶん 『そうだね。』 と答える。 “運命“ なんて背筋が凍りそうな言葉を “愛してる” なんて口がさけても言わない言葉を 彼女には惜しみなく言ってしまう。 33年間生きてきて、こんな自分が存在するとは思ってもみなかった。 365日1秒たりとも離れたくない。 この気持ちを解決するには 一生言うことはないだろうと思っていた 『俺と結婚してください。』 これしかないと思う。
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