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Fated -Japanese Girl-
恋愛のスタートはいつも一目惚れ。
まずはビジュアルが良くなければ話しにならない。
身長に拘りはないけど高いにこしたことはないし、ヒゲとかイカツイのはパス。
小綺麗で中性的で日本人より白人が好み。
中身はジェントルマンで趣味が合うこと。
それでいて自分の時間を優先させてくれる人
(会いたいときに会ってくれる)がいい。
自分に対して好意があるのかないのかは
ご馳走してくれるかどうかでジャッジする。
だってそれが1番分かりやすいでしょ?
私は完全減点方式の恋愛スタイル。
“合コン?紹介?そんな効率の悪いことやってらんない。”
合コンは好みの相手がいるかわからないし
(ビジュアル)
紹介は好みの相手かわからない
(中身)
数打ちゃ当たる的なバクチは時間と体力の浪費でしかない。
これが私の恋愛におけるスタンス…。
『え?じゃあどうやって恋愛するの?社会人なんて、職場で出会うか合コンか紹介かナンパかお見合いか…。大きく分けたらこれくらいしかないよ?まぁ、それは学生も同じか…。』
職場の美歩先輩がビックリした目をしながら聞いてきた。
『マッチングアプリです。条件を入力できるから基本が合格ラインでしょ?』
『確かに…。後は微妙なズレの補正だけって?』
『はい!それくらいはね…。仕方ないので。』
『でもそれってさ。ある意味、恋愛じゃなくない?恋愛ってさ浮き沈みがあってお互いのことを知っていくじゃん?なに考えてるのかわかんないのが楽しいでしょ?ドキドキわくわく的な。』
『私は、パァーンと始めたいんですよ。お互いが “好き!好き!パァーン。“ みたいな…。日本人って気持ちをストレートに言葉に出さないでしょ?あれが嫌で…。』
自分の中でこれが恋か恋じゃないのか。
相手の中で好意か好意じゃないのか。
目に見えるようにしてくれないとめんどくさくなる。
私のことを誘うなら
“デートしてください。”
とはっきり言って欲しい。
相手の言葉にあるその先を考えるのは嫌。
全部がストレートであって欲しい。
そんな効率重視な私に衝撃的なことが起こったのは美歩先輩に誘われて、休日にボルダリングジムに行ったときのこと。
『あれ?美歩、久しぶりじゃん。』
『望月!めずらしくない?この時間にいるとか。』
アクティブで顔が広い美歩先輩と出掛けたら
知り合いに遭遇する率がかなり高いけど
望月さんは今まで会った人達と少しタイプが違って、爽やかで優しそうないい人って感じが全面に出ている。
美歩先輩の薦めもあって今日は望月さんにボルダリングを教えてもらうことになった。
丁寧な言葉遣いで、優しく分かりやすく手取り足取り教えてくれるから、楽しくって夢中になる。
望月さんのことは好みじゃないと思ったくせに、下から優しい目で見守ってくれることに安心感を覚えたり
『瞳ちゃん、俺ちょっと美歩に呼ばれたから少しだけ休憩しといてくれる?』
と言ってミネラルウォーターを手渡してくれる気遣いに好感を持ったり
見た目も別にハズレではないけど中身はわりと私の好みだなと思ったり…。
めずらしく加点方式で見てしまっていて、そんな自分に調子が狂う。
私は効率が良い出会い方しかしたくないし、分かりやすい相手が良い。
だけど、運命を信じてしまうタイプで
プラスして意外とロマンチストだったりするからタチが悪い。
恋愛のスタートがいつも一目惚れなわりには
自分の価値観をすべて変えてしまうような一瞬の出会いをまだしたことがないし
目があった瞬間に運命だと気がついて
触れあった瞬間に確信へと変わるような人にはまだ巡り会えていない。
足がすくむような恋がしたいけど、それってどれくらいの時間と体力を消耗するんだろう…。
って考えると逆の意味で足がすくむ。
普段こんなことを考えたりはしないのに、なぜか望月さんを見てると自分の恋愛に対しての本質的な気持ちが頭をよぎる。
だけどめんどくさがりな性格からあれこれ考えるのは嫌で、ちょうど望月さんが戻ってきたこともありボルダリングを再開させた。
さっきより少し難易度をあげると、私の浮わついた心のようにうまくバランスが取れなくて落下しそうになる。
『キャッ!』
と声をあげたのと同時に
バシッと音をたてて望月さんが私を支えてくれる。
驚いた目で私を見て心配そうに
『大丈夫?』
って聞いてくれるから
ビックリしたことも忘れて思わず笑顔で
『ありがとうございます。』
って言ってしまった。
私の体を支えてくれている望月さんが間髪いれずに
『結婚してください。』
といきなりプロポーズしてきたから
一瞬これは夢なのかと戸惑ったけど
心臓の鼓動がダイレクトに伝わってきて、これは夢なんかじゃなくてリアルなんだとわかった。
この胸のドキドキは私のものなのか望月さんの体から伝わっているのかわからなくなるほどの衝撃的な出来事で、返事もなにもストレートすぎる告白がやけに胸に突き刺さった。
だから私は
『初めてですよ!プロポーズされたのは…。』
と言って笑ってしまった。
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