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男なんて下心しかないバカばっかりだと思っていた。 そんなヤツらとする恋愛は負けたら終わりのゲームでしかない。 ワンピースを着た正統派女子を演じた次の日は ノースリとデニムでコミュ力高め系女子を演じ 来るもの拒まず、去るもの追わず。 経済的な余裕がある男の良いところだけをつまみ食いして 飽きたらリセットボタンで即終了。 男が女に求めることなんて1つだし オッサンになればなるほど見た目が良い若い女なんてアクセサリー感覚にしか思っていない。 ギブ&テイクでウィンウィン。 23歳の女がする恋愛なんてオシャレで楽しいが1番でしょ? 若いうちは痛い目見ない程度に遊んでおいたらいい。 恋愛なんてそんなものだと思っていた。 “こんな時は何て言えば良いの?” 恭平さんと一緒にいると初めての感情ばかりで気持ちが忙しくなる。 恋愛経験はそれなりにあるはずなのに “なんでもっとちゃんとした恋愛をしてこなかったんだろう…。”と後悔してしまうぐらい恭平さんは応用がきかない。 悩んだり考えたり、自分のペースで出来ない恋愛には今まで興味がなかったくせに 1ヶ月過ぎた今もこの恋のリセットボタンを押さずにいる。 ゲームに負けたくないわけじゃない。 ただ恭平さんが醸し出す雰囲気と私を包み込んでくれる強さと優しさに 今までにない安心感と居心地の良さを感じてしまって手放すことが出来ない。 “この感覚が本当の恋なのかもしれない。” 私と15歳年上の恭平さんが知り合ったのは新卒の私が恭平さんの部署に配属になったからで劇的でも運命的でもなんでもない。 もちろん恭平さんに初めから憧れを持っていたとか一目惚れをしたとかも全くない。 会社は部内外含めてオシャレで若い男が多いし 同期も学生上がりで頼りないとはいえ育て方次第では良い物件になると思う。 正直なところ、アラフォークラスまで的を広げなくても男探しには不自由がないし 逆に若い女目当てで近寄ってこられたらドン引きしてしまう。 だから恭平さんと私がただの上司と部下の関係から特別な関係になったのは本当に偶然で 仕事だけをしていたら“田中さん”から“美月”と呼ばれ方が変わることなんてなかった。 『恭平さん、今日は私が朝ごはん作るからベットでゆっくりしててね。』 『俺作るから、美月は寝てな。』 『でも…。』 『美月は料理とかしなくて良いよ。』 『…。』 恭平さんは優しさからなのか、いつも自分でなんでもしてしまう。 私のことを何も出来ない女だと思っているのか、そもそも自分のテリトリーに入って欲しくないのか…。 “それでもやりたい。” と私が言うことはワガママになるのかがわからなくて、信用されてないような見えない壁を作られているような気がして淋しくなる。 『今日は何する?』 と恭平さんが作ってくれた朝ごはんを食べながら聞くと 『美月の好きなことで良いよ。』 といつもと変わらない返事が返ってくる。 『じゃあ、ディズニーは?』 『…人多いからやめた方がいいんじゃない?そうだ!こないだ言ってたホテルの予約とれるか調べてみよっか。ルームサービスで限定のアフタヌーンティーが出来るって言ってたでしょ?』 『…。』 人が多いとかどうでも良い。 ディズニーなんて友達との方が楽しいから行きたいなんてただの口実。 恭平さんはいつも落ち着いた大人の人が集まるところにしか私と行ってくれない。 私が幼すぎて、子供のレベルには合わせられないってことなのかな…。 私は大人な恭平さんが好きだし安心するけれど、子供みたいに無邪気にはしゃぐ恭平さんが見てみたい。 色々なことが知りたい。 もっともっと知りたい。 ただそれだけなのに…。 『美月?どうした?』 『…。恭平さんは私のことを子供だと思ってる?何も出来ないバカで同じレベルには恥ずかしくて合わせられない?』 『そんなこと思ってないよ。』 『じゃあ、どうしてご飯作ったりお掃除したり、私のこと頼ってくれないの?ホテルのディナー好きだよ?銀座でお買い物も楽しい。だけど私は…。私はもっと普通にあてもなくブラブラしたりカラオケ行ったり行列のできるカフェに行ったりしたいの。友達とじゃなくて恭平さんと普通を…。これが普通かはわからないけれど些細なことを楽しんで色々な恭平さんが知りたい。』 『…。』 『何も言ってくれないってことはやっぱりそう思うのは私のワガママなんだね。ごめんなさい。今日はアフタヌーンに行こ?』 『…。良いの?』 『うん。行きたかったから予約とれたら嬉しいな。』 『そうじゃなくて、ディズニー。こんな15歳も年の離れたオヤジと行ってくれるの?恥ずかしくないの?』 『え?』 『俺は美月が恥ずかしい思いをするんじゃないかなって思ってデートにそういう場所を選ぶのは避けてた。周りは年の釣り合いがとれたカップルばっかりだろ?俺はドライブも好きだし自転車もサーフィン、グランピング、ビリヤード、結構なんでも好きで…。でもそれに美月を付き合わせられないって思ってた。 料理や掃除はやって欲しくないんじゃなくて 美月は俺の家政婦じゃないだろ? 好きな女が作る飯が食べたくない男なんていないよ。 負担じゃないなら作って欲しいよ。』 『そんなこと思ってたの?恭平さんはバカだね。世界一素敵な彼氏なんだから見せびらかしたいに決まってるじゃない。私にとっては恭平さん以上の人はいないよ?それに恭平さんって38歳には見えない。おしゃれだしイケメンだから30過ぎにしか見えないよ。』 『まじで?じゃーミッキーの耳もまだつけれるかな?』 『あははっ。そこが基準なの?だとしたら大丈夫。ダッフィーもつけれるよ。』 『じゃあ、今日はディズニーに行ってお揃いの耳をつけようか。明日はドライブでどう?』 『賛成!恭平さん大好き!耳つけたら写真撮ろうね。』 『それは恥ずかしいわ。』 勇気を出して言ってみて良かった。 恭平さんと一緒にいられて幸せだけど不安で仕方なかった。 何度も気持ちを確かめたくて、でも聞けなくて “本当に私のこと好き?” いつもこの言葉が心の片隅にあって苦しかった。 だけどもう大丈夫。 今日からまた色々な恭平さんを知ってケンカすることも惚れ直すこともきっとある。 今はそれがすごく楽しみ。 これからも2人で沢山思いでつくっていこうね。 “2人のInstagramアカウント作りたい。” ってもう1つお願いを言ってみちゃおうかな。 さすがにこれは調子乗りすぎって言われちゃうかな。
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