Unrequited Love

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Unrequited Love

言われなくてもわかっている。 これはただ俺の片想い。 夢の中だけでもいいから彼女を俺のものにしたいと思う悲しいくらいの片想い。 ビジュアルはハッキリ言って好みじゃない。 だけど時折フワッと薫る香水の香りにギャップを感じたり くだらないことでも笑ってくれる人柄だったり さばさばした口調だったり 何でもないようなことがいちいち引っかかって気がつけばいつも目で追っていた。 だからこそ彼氏がいることに気がつくにはそう時間はかからなかったし 興味本意から話を聞いてみれば さぞかしお似合いなんだろうと落ち込むばかりだった。 俺が自分の気持ちに気がつく気がつかない以前の問題で この恋は初めから負け戦だ。 何もかもが遅かった。 人を好きになることが こんなにツライものだなんて 知らなかった…。 言われなくてもわかっている。 これはただ俺の片想い。 諦めるのか諦めないのか。 忘れられるのか忘れられないのか。 考えれば考えるほど無限ループに陥いる俺の片想い。 それとなくLINEを交換してみたけれど いつどのタイミングで送ればいいかわからずスマホを手にしてはため息をついていた。 月曜日から金曜日の9時から17時まで 彼女と一緒の時間を共有できる俺は きっと彼氏よりも多くの時間を彼女と過ごしてはいるけれど男としての密度はかなり薄く中身は空っぽだ。 それでもコーヒーを買いに行くと彼女の分も自然と買ってしまっている自分はきっと 無意識にバーチャル彼氏を演じているんだろう。 そんな自分に気がつくたびに“何をやっているんだか”と呆れてしまう。 彼女はきっと俺の気持ちに気がついたら俺との距離を開けてくる。 俺のことが嫌いとかそんなんじゃなくて 彼氏の手前とかそんなんでもなくて ただ単純に自分がどう振る舞えば良いのかがわからなくなって結果避けてしまうタイプの人間だ。 彼女を困らせてしまう前にこの気持ちを捨ててしまおうとどんなに固く心に誓っても彼女を見るたびに決意がくずれる。 届かない想いを涙で流せたら何かが変わるかもしれないけれど泣くことすらできない。 大丈夫。 言われなくてもわかっている。 これはただ俺の片想い。 夢の中だけでもいいから彼女を俺のものにしたいと思う悲しいくらいの片想い。 休日の表参道で彼女を見かけた。 もちろんとなりには彼氏がいる。 楽しそうに話をしている彼女は俺には一度も見せたことがない女の顔をしていたから 切ない気持ちになったけれどなんだか少し嬉しくもあった。 彼女はきっと大事にされている。 本当は俺が彼女を包み込みたいけれど 彼女が求めている手は俺じゃない。 今すぐには無理だけれど彼女の幸せを心から願える自分になれたなら 頑張った頬に優しい雨が降る。 そして今よりきっとずっと強くなれる。 雨の後だけにかかる虹を見ることができたなら 俺はまた誰かを好きになることができる。 今はただ俺の片想い。 夢の中だけでもいいから彼女を俺のものにしたいと思う悲しいくらいの片想い。 言われなくてもわかっている。 これは片想い。 諦めるのか諦めないのか。 忘れられるのか忘れられないのか。 考えれば考えるほど無限ループに陥いる俺の片想い。
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