Addicted

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“急だけど今月末に帰国することになった。 葵がまだあの家に住んでるなら、部屋決まるまで、居候させてくれる?” 夜中に樹からきたLINE。 17時間たった今もまだ、返事ができずにいる。 樹は2年前に何かの研究でアメリカに行った私の幼なじみ。 幼稚園から高校を卒業するまでずっと一緒で 選んだ大学は違ったけれど、2人とも名古屋から東京に出てきた。 私は他界した祖母が住んでいたこのマンションで大学生の時から一人暮らしをしている。 部屋数は多いし掃除も大変だけど 家賃はかからないし、横浜ってゆう立地条件も良いし、通勤も便利なので今も変わらずここに住んでいる。 幼なじみで気心知れていて、部屋数もあるなら、何も考えることなく居候させてあげたら良いじゃない。 って思うかもしれないけど、そう簡単にはいかない。 だって、私は2年前に樹に告白をしている。 ずっと一緒にいることが当たり前すぎて 異性として意識したことはなかったし お互い普通に彼氏・彼女がいて それに嫉妬したことも一度もなかった。 だけど、海外に行っていつ戻ってくるかわからないって聞いた時、 思わず 『すき。』 と言ってしまっていた。 いつから好きなのか、それすら自分でもわからない。 どう向き合ったらいいのかなんてこと、わかるはずもない。 私が何事もなかったかのように振る舞うから樹も特になにも言ってはこなかったけど あの日から私は樹との距離感がわからなくなっていた。 “横浜の家にまだ住んでるよ。部屋もあるし、決まるまで全然いてくれて大丈夫。” たったこれだけの事を 返すのに丸1日かかってしまった。 それからすぐに荷物が送られてきて樹自身も帰国してきた。 日本に戻ってきてから仕事が忙しいのか樹とはすれ違いが続いていた。 同じ家に住んでるからって別に会う必要なんて無い。 しなきゃいけないこと私にだって沢山ある。 毎日話をする必要なんて別に無い。 今まで嫌ってほど話をしてきた。 2年ってゆう時間があの告白を時効にしたと思いたい。 だって、不安だから。 樹にとって私はただの幼なじみ。 永遠に続く関係じゃない。 そんな事はわかっている。 だけどやっぱり毎日会いたい。 こんなに近くにいるのに会えないのは苦しい。 この気持ちを伝えたら私たちはどうなるんだろう。 いつの間にか私は樹がいないとダメになっている。 会いたくて、気持ちが限界で今日は絶対話がしたいと思って 樹が帰ってくるまで起きて待っていた。 夜中の1時。 ガチャガチャって玄関で音がして樹が帰ってきた。 リビングに入ってきて私が起きていたことに気づく。 『なんで、起きてるんだよ…。』 『樹が帰ってくるの待ってた…。』 『なに?どうかした?なんかあったの?』 『なにもない…。ただ樹に会いたかった…。』 『葵…。そういうこと言うなよ…。』 『…なんで?日本に戻ってきて同じ家に住んでるのに会えないとか…。』 『だから。そういうこと言うなって。期待するだろ?』 『期待…?』 『2年前…。葵が俺を好きって言ってくれて嬉しかった。けど、葵は俺と距離とるようになって俺が思った好きと葵の好きは違うんだなって思った。アメリカに行って連絡はしてたけど淋しいとか会いたいとか葵から聞けることはなかった。 でも俺はずっと葵に会いたかった…。 日本に帰国することが決まって本当は部屋も用意してもらえたけど、葵に会いたくてたまらなかったから居候させてほしいって頼んだんだ…。』 『会いたかったなんて言わなかったじゃない。ずっと毎日帰ってくるのも遅くて顔を合わせることもなかったじゃない。』 『言えるわけないだろ?葵にとったらこの2年なんてただの2年だったのかもしれないし。それに好きな女がいる家に平気な顔して帰れるほど、俺は男できてないよ。』 『…。わからないの。 いつから好きなのか…。どう向き合ったらいいのか。ずっと一緒にいたのに、これからも一緒にいるにはどうしたらいいのかわからないの。』 『そんなの簡単。俺は葵が好きだ。 きっとずっと昔から。葵は俺の中でずっと特別だったんだと思う。葵は?』 『…好き…。』 言葉にすると急に恥ずかしくなった。 私の事で知らないことはたぶん何一つない樹に気持ちを知られるのは なにも着ていない自分を見られているよう。 『もうやだ。28歳にもなってこれが初恋みたいで恥ずかしい。』 『たぶん、俺も葵もお互いが初恋だと思うよ?で、今ようやく実った。 ねぇ、キスしても良い?』 『恥ずかしいからやだ。』 『じゃあ抱きしめても良い?』 『それもやだ。』 『じゃあ、なんだったら良いの?』 樹の問いかけにしばらく考えて私は 『…。交際0日で結婚とか?』 と笑って言った。
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