Honestly

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今日も行きつけのバーで茉莉とかるく飲んでいる。 『ねぇ、誰かいい人いない?』 『いい人って?』 『将来、結婚を見据えられるような、安定した男。』 『それなら亮治がいるじゃん。』 『なんで、亮治なのよ。嫌だよあんなチャラい男。』 『そう?なんだかんだ2人は良い感じだと思うけど?』 と茉莉は笑いながらこっちをみて 『ちょっとごめん。電話。』 と席をたった。 私と亮治と茉莉は大学からの友達で就職してからもこうやってよく飲んだり遊んだりしている。 茉莉は銀行で働いていて、彼氏持ち。 亮治はSEをしていて、彼女なし。 私は企業の受付嬢をしていて、彼氏なし。 結婚したくて焦っているわけではない。 ただ、この仕事が問題なだけ。 私は受付嬢って消費期限があると思っている。 どんなに綺麗にメイクをして見た目の年齢をごまかしても中身は変わらない。 だから、結婚…。ではないけれど 彼氏がいたら年齢に脅かされることはないのかな…。っていう安易な考え。 でもちゃんと異動願いも出してはいる。 働くのは嫌いじゃないし、出来ることなら結婚しても働きたい。 『今日も茉莉と飲むの?淋しいな(笑)』 1時間前にきた亮治からのLINE。 『ほっといてよ!』 と返した。 亮治からはなんだかんだ毎日LINEが来る。 さっき、茉莉には “亮治なんてチャラい男は嫌だ。” って言ったけど実はあの日から亮治の事が気になっている。 あの日…。 私が彼氏に二股かけられて別れた日。 亮治は涙が止まらなかった私に朝まで付き合ってくれて 添い寝までしてくれた。 もちろん、なにもない。 失恋からの立ち直りが早かったのは、あの日亮治の腕の中でぐっすり眠れたからだと思う。 でも、そんなこと誰にも言えない。 だって私は学生の時からずっと 『なー、俺ら付き合わん?』 って亮治に言われ続けていたのを 『地球に2人だけになってもありえない。』 と言い続けてきたから。 亮治はノリも良くて優しいからいつも周りには女の子がたくさんいてて 私は本気だとは思っていなかったし、そもそも誰にでも優しいのは嫌。 亮治は特定の彼女は作らなかったけど 私がもし、付き合ったとして 周りからこの子達と自分が同じように思われるのも嫌だった。 亮治になびかない事で、亮治からも周りからも高嶺の花じゃないけど 一線を引きたかったんだと思う。 【もし1時間前に戻れるなら何をしますか?】 って聞かれたら、私はさっき送ったLINEの返事を書き直したい。 いつも可愛くないことばっかり言ってしまうから後悔ばかり。 だからもし時間を戻せるならせめてLINEくらいは素直でいたい。 【もし出会った頃に戻れたらどうしますか?】 亮治と向き合いたい。 この頃は気にはなっていなかったし もちろん好きじゃなかったけど 今も愛想をつかさず変わらず私に優しくしてくれる亮治はもしかしたら本気で告白してくれていたのかもしれない。 周りにどう思われようといいじゃない。 私の目の前にいる亮治だけを見てみたい。 男女なんて1つでも違えば何もかも変わってしまう。 何度も何度もやり直せれたらいいけれど、そういうわけにもいかない。 明日も今日と同じように笑ってくれる保証はない。 そこまでわかっていても、素直になれない私はかなり重症だ。 電話から戻ってきた茉莉に 『ねぇ、亮治って…。』 と言いかけたけど、やっぱりやめた。 『なに?亮治がどうかした?』 『なにもない…。』 『安心しな。亮治はあんたの事がずっと好きだよ。』 『なにそれ…。そんなこと聞いてないじゃん…。』 『そ?私今、そう聞かれたのかと思っちゃった。』 『…。茉莉、私って…。』 『亮治の事が好きだよ。認めな。』 『…。うん。好きだと思う。』 『だーって。良かったね、亮治。』 テーブルの上に置いていたスマホを手にとって茉莉は言った。 『え?なに?』 『ん?今、亮治と電話繋がってるからさー。私、トイレいってくるしこのまま話してくれて良いよー。はい。』 とスマホを渡してきた。 『もしもし…。』 『今どこ?すぐ行く。2人で話したい。』 『だめ。今日は茉莉と飲んでるから。』 『じゃあ、3人で飲もう。すぐ行く。』 『…。』 『おい、俺が何年待ったと思ってるんだよ。』 『………いく。』 『え?』 『…あとで、家行く。会いたいから…。』 やっと素直に言えた。
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