決着

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決着

「引き金って何がですか?」  一美は白田の独り言に対し、疑問を口にした。  システムエンジニアの多くに悪態をつきながら独り言を漏らす人が多い。  多少プログラミングの知識がある白田もその例に漏れない。 「俺、そんなこと言った?」  わざとらしく誤魔化す白田の態度に一美は踏み込みすぎたかと後悔した。  普段は飄々としているが、基本的に白田は面倒見が良い性格だ。  本来ならミスをした一美が全てを対応するのが、ルールだ。それは一美も理解しているし納得もしている。  だが、なんだかんだと言いながら白田は手伝ってくれている。  半面、パーソナルスペース(他人との距離感)に踏み込むと、白田はいい顔をしない。拒絶までとは言わないが、誰が見ても機嫌が悪いと判断できるほど顔と態度に出ることを一美は思い出した。 「そんな事よりも、ヒトミちゃんの修正対応は完了したのかな?」  確認する、と言い終えるや否や白田が手慣れた手つきでキーボードで操作する。他の人から見るといつも通りの白田だが、一美にはどこかしら違和感がある。  何か言いたいことを我慢している時、白田は眉を曇らす。
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