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「白田先輩、さっきからブツブツと誰と話をしているんですか。暇でしたら手伝ってくれませんか?」
「なになにーヒトミちゃんってば、やっと先輩である俺に興味を持ってくれた?」
黒髪短髪の見た目は真面目そうな男。白田はスマホをいじりつつ、目線だけを動かす。その先には怒りを露わにしたキャリアス-ツの女性がパソコンに向かって、キーボードと格闘している。
「私の名前は『かずみ』です!ヒトミって呼ばないでください。何度言えば伝わるんですか!」
クビからぶら下げたたネームプレートを掴むと一美は白田に向かって突き付ける。『新一美』と書かれた文字をこれでもかと眼前を突きつけた。
「そうやってツッコミを入れてくれるのヒトミちゃんだけだよ」
「他の皆さんは先輩の態度に諦めたからです。早く残業を終わらせて会場へ向かいましょう!」
やる気のない先輩の発言に、怒りを隠さず一美は資料の修正を続ける。
業務時間内ならば、空調が良く効くエアコンの音や資料を印刷する音で賑やかな職場であるが、今は明かりは落とされ、残業で残っている二席だけが灯っている。
湿気が多い季節とエアコンが止まっているせいで、オフィス内は蒸し暑い。
心なしか部屋の隅に佇む観葉植物も元気がないように見える。
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