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頑張る理由
「ったく、最悪のデータを納品したクソ会社め……」
パソコンの画面を睨みつけながら、白田が珍しく感情を剥き出しにしている。
何が起きても常に飄々としている。
一美が抱いてる白田の印象だが、今日はいつもと違う。
「先輩、珍しくガチキレしていますね」
やっぱり甘いものが足りてないのでは、と邪推してしまう。
「おっと。失言。今のは聞かなかったことにしてくれ」
「どうしてですか? ここには私以外、誰もいませんよ」
カタカタとキーボードを叩く音だけが響く。
先ほどのように流されるかと思った一美は白田の反応が予想と違い、作業を止めた。
オフィス内が静寂に包まれる。
「先輩が携帯を切っちゃったから、会場の雰囲気が分からなくなっちゃいましたね」
妙な沈黙に耐えきれず、それほど気にしていないことを口にしてしまう。
「こういうのは不得手なんだけど」
腕を組み、目線を上にしながら白田がウンウンと唸る。
「まーいっか。メンドウな事は知っておいて損はない」
言い訳のように独白すると、白田は「ウィンドウズ」と「L」キーを同時に押してパソコンにロックをかけた。
教えると言った割にはまだ悩んでいるかのような、微妙な表情を浮かべながら一美の席へ向かった。
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