頑張る理由

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「このWEB案件の取引先を決めたのが誰か知ってるよな?」 「はい、常務です。私もキックオフ会議に参加していましたから」 「ヒトミちゃんはまだ新人だから、俺みたいな発言をしても許されるけど、俺の場合はアウトだね」  頭を掻き、気まずそうな顔で白田が囁く。 「業者を批判するってことはだ、そこの会社を選んだ常務も否定することになる。だからさっきの発言は内緒にしておいて」 「え、どういう意味ですか?」 担当した業者を否定したはずなのに、それがどうして乗務を批判したことになるのか、一美には理解できない。 「上の人たちは責任を負うのが仕事。数ある業者のプレゼンを受けた上で選んだ」  画面構成から工数、社内ポリシーや強みや実績取引を決める上で様々な条件がある。  その中から条件や納期、金額などを吟味し、決定する。 「しっかりルールがあって決めるところもあれば、うちの会社みたいにプレゼンターとの相性とか、そんなフワっとした感覚や直感で決める人もいる」  良いか悪いか俺にも分からない、と自嘲気味に呟くと白田は再び頭を掻きながら自席へ戻った。 「その結果、俺たちのような下っぱからの意見が上に行って、業績やら結果やらって、更にメンドくさい話をするのさ」 「そう、なんですね。上の方々も色々と大変なんですね」 「……そういう感想を抱けるうちはまだマシさ」  自嘲気味に毒づく白田に先輩の様子がおかしい、と一美は感じた。
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