始まりはファンファーレと共に

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始まりはファンファーレと共に

「それでは我が社の創立百周年記念パーティーを開催いたします!」  常務の一言が言い終えるや否や盛大なファンファーレと陽気な音楽が鳴り響く。  結婚式場を髣髴させる大きな会場に二百人以上のスーツを着た人々が集まっている  待ってましたと言わんばかりに、パーティーが始まる。  若手社員たちが一斉にビュッフェ形式の料理へと群がっていく。  規則的に並べられた料理は、入り口から健康そうなサラダとアルコールやソフトドリンクから始まる。  中央部には身体に悪いと理解しているが、食べ過ぎてしまう揚げ物が山のように詰まれている。  ステージ側には甘さを極めたデザートが見栄えよく配置され、一番奥には世界三大珍味のトリュフやフォアグラを使った料理を取り揃えているという完璧な配置である。 「何から食べようか」  雑談を交えつつ、部署の違う異性へ声をかけるタイミングを狙っている女性社員。  唐揚げの山を見て、ここが天国だと感動する男性社員。  今後の展開や雑談から出てくるジャストアイデアで会社の経営施策を話す役員たちやタイムスケジュールを確認しつつ、イベントの指揮をとる運営スタッフ。  開始から五分も経たず、会場は賑やかで楽しい雰囲気に包まれた。 「……では、暫しの間、ご歓談をお楽しみください!」  緞帳が下がったままの舞台上でスタッフが神妙な顔付きをしている。  ポンポンとマイクを叩き、首をかしげながら奥へ消えて行った。  マイクの音量設定は問題ないが、会場内にいる人数が多く、全員が雑談に集中しているため、想定よりも音量が届いていないことが気になったのだろう。
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