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ある日、男はマクラの専門店によった。
そこには、好きな夢をみることができるマクラがおいてあった。
値段は十万円。
お店の人にくわしいことをきくと、マクラの中に好きな写真を入れると、その夢がみられるというのだ。
男はまよわずに十万円をはらった。
その夜、マクラの中にヒツジのむれの写真を入れた。すると、たくさんのヒツジたちにかこまれ、フワフワの毛にもぐりこむ夢をみてスヤスヤとねむることができた。
男はいろんな写真をマクラに入れた。
卒業アルバムをカラーコピーして、好きだった女の子の顔を切りぬいてマクラに入れた。そうすると、ひとこともしゃべれなかった彼女と夢の中では楽しくはなすことができた。
ある日、食堂で会社の友だちと昼ごはんを食べていると、
「最近、こわい夢ばかりみて、ゆっくりとねむれないんだ」
とうちあけられた。
「じゃあ、ボクが買った特別なマクラをあげるよ。マクラの中に好きなものの写真を入れると、気持ちよい夢がみられて、ぐっすりとねむることができるんだ」
男はそういうと、次の日、マクラをもってきてその友だちにあげた。
「うつくしい花たちがさく野原の写真を入れると、本当に気持ちよい夢がみられ、ぐっすりねむることができたよ。本当にありがとう」
と友だちはおれいをいいにきた。
「よかったね。ボクもうれしいよ」
男はニッコリとほほえんだ。
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