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留守番のはじまり
職場からリフレッシュ休暇とやらをもらった。勤続20年でもらえるらしい。5日間。土日を避けて当てはめると、一週間以上休むことができる。
「あら、そうなの。ずっと家にいるの」
帰って妻のひろみに報告すると、露骨に嫌な顔をされた。
「いいだろう。毎日、仕事頑張ってるんだから。ひろみは毎日が休みみたいなもんだから、わからないだろうけど…」
つい口から出た言葉に、しまった、と思ったが、遅かった。
ちらり。
恐る恐る横目で見ると、意外にもひろみは静かに聞いていた。
「ちょうど良かった、前に勤めていた職場に欠員が出たみたいなの。連絡があってどうしようか迷ってたの。ほら、私達の結婚式に来てくれたさっちゃん、覚えてる?検査入院で一週間ほど会社を休むらしいの。実家からの方が近いから、そっちから通おうかな。一週間、家を空けてもいい?」
何と、ひろみがいないのか! 一週間、自由に過ごせるではないか!
やったー!
おっと、ここは落ち着いて。
「それは大変だね。こっちは大丈夫だから、行ってあげなよ」
真面目な顔で返す。
「でも、本当にたけし大丈夫?子どもたち、置いていくよ?私は仕事だし、親もおばあちゃんの介護とかあるし…」
子どもは三姉妹。長女の桜は小学2年生、次女の桃は年長、三女の花は2歳だ。長女と次女を小学校と幼稚園に送り出せば、家には花一人だ。花は僕になついているので、何も問題ないと思った。
「大丈夫だって、僕だって父親なんだから。実家の両親にもよろしくな」
顔が綻びそうなのを我慢しながら、留守番に心踊らせる自分がいた。
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